6#風船が好きな赤い犬

 「きゃっ!犬!!」




 しゅーーーーーーー・・・




 しゅたっ!!




 ばぁっーーーーーーー!!





 しゅたっ!




 親ツバメのレッシュとフーレは、威嚇して赤い大きなか犬の周りを飛び回った。


 「な、何さ!こ、この風船はツバメさんのものなの?!」


 大きな犬は、周りを飛び交う親ツバメに翻弄され前肢をブンブン振り回して追い払う格好をして叫んだ。


 「こ、怖いよーーーー!!変な『怪物』に食われちゃうよーー!!」


 「パパー!ママー!はやく『怪物』追い払ってよーーー!!」


 ツバメの雛達は巣の中で寄り添って、ビクビク震えていた。


 


 しゅーーーーーーー・・・




 しゅたっ!!




 ばぁっーーーーーーー!!





 しゅたっ!





 しゅーーーーーーー・・・




 しゅたっ!!




 ばぁっーーーーーーー!!





 しゅたっ!




 「ちょ、ちょっと!お、俺!べ、別に!!君達、ツバメ達を襲おうとはしないよ!!

 た、ただ!!こ、このふ、風船を!!」




 赤い大きな犬は、おもむろに萎んだ風船の吹き口の栓をポンと前肢の爪で引き抜くと、風船の吹き口を鋭い牙の生えた口にくわえ、息を深く深く吸い込んで・・・




 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!




 と、頬っぺたをはらませて萎んだ赤い風船に息を吹き込んで膨らませ始めた。




 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーーーっ!!




 赤毛の大きな犬の吐息で、


 赤い風船に描かれた可愛いウサギの絵も、


 ツバメ達がこの風船が邪魔で立ち往生したときに、雛達が風船の表面に付けた糞の塊の跡も、


 どんどんどんどん大きく大きく大きく大きく膨らんでいった。




 「うわーーーーー!!ふうせんが元通りになっていく!!」


 「わーーーい!!どんどん膨らめーーーー!!」


 「やんや!やんや!」


 「すごーーーい!!」


 ツバメの雛達は、大きく膨らむ赤い風船に興奮した。


 「もういいよ!もういいよー!」


 「きゃーーーっ!!割れちゃうーーー!!」


 親ツバメのレッシュとフーレも、どんどん膨らむ風船き違う意味で興奮した。そう、いつ風船が割れるか解らない恐怖で。


 今まで巣を塞いだ邪魔な風船が、ツバメ達の羨望の的となった。




 ぷぅーーーーーーーっ!


 ぷぅーーーーーーーっ!




 やがて、赤毛の大きな犬が膨らめた赤い風船が洋梨のようにパンパンに膨らむと、


 「これ以上膨らますと、パンクしてツバメちゃん達がビックリするだろうなあ。」


 と、風船の吹き口に前肢の爪できゅっ!と栓をした。




 「ねえーーー!!この風船貰っていい?俺、風船大好きなんだ!!風船を見るとつい、一緒に遊んじゃうんだ!!突いたり、膨らませたり、割ったり!!」




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