華族とロスチャイルドの末裔

ハリマオ65

第1話:木下七郎の生い立ち1


主な登場人物:木下康夫(祖父)1885年生、貴族院議員、1945年、自宅で自決。

木下貞夫(父)1924年生、木下早苗(母)1928年生、木下悦夫(兄)1949年生、

木下小百合(姉)1951年生、木下七郎(主人公)1953年生

友人・ティム・RCH1952年生、友人ティムの父リチャード・RCH家のスタッフ:1927年生まれ


 木下家は、徳川家の関連の旧華族(侯爵)で由緒正しき名家である。東京に大きな屋敷を持ち、日本の戦後でも不自由のない生活を送っており、大正時代には、所有する土地は、池袋から渋谷まで続いたという広大なものだった。政界、財界、軍上層部との強いパイプがあり、第一次大戦後1915~1920年の空前の好景気(大正バブル)の時に、持っていた広大な土地を、新興財閥の大金持ちに、全て売り払い、その資金で、秘密裏に友人の大手商社の役員、山下真一に依頼して多額の金地金144Kgを買って、スイスの銀行に保管した。関東大震災で東京が焼け野原になったにもかかわらず、武蔵野の自宅は、ほとんど、影響を受けなかった。1945年に入り、終戦が近いと感じた時、長年、交流のあった佐藤和彦弁護士に依頼し、遺言信託の手続きをとった。その数ヶ月後、1945年9月、木下康男は、玉音放送を不服として、自らの命を絶った。


 木下家の人々は、終戦後は、質素な生活してなんと生きながらえた。その後、木下貞夫が以前、父、木下康男と交流のあった三菱商事の会社役員、山下真一の口ききで、三菱商事に就職させてもらった。木下貞夫、一人で、豪邸の維持費と家族の生活費用を賄うのは難しいと考えて、富豪に売りわたすことにし、家族は武蔵野の中古の家に移り住んだ。しかし、木下家の家訓で、子供には教育熱心で、専属の家庭教師をつけて、しっかり教育していた。子供達が英才教育を施され、語学、数学、文学、音楽を小さい時から、みっちり教え込まれた。七郎も例外ではなく、1歳になり、言葉を話せるようになってから、書生さんが絵本を読み聞かせるようになった。どの本が良いか、一通り、毎晩見せて、気に入った本を選び出した。マザーグース、イソップ、ピータラビットの本を毎晩、読んで聞かせた。2歳になり、話をするようになった頃から、国旗や地図、九九算をみせた所、覚えが早いのに驚き、都道府県ジグソーパズルも好きで、いろいろなものを買い与えた。3歳になり、アルファベットや、簡単な英会話の絵本をみせると、英語に興味をもち、すぐに英語を音で覚えたので、英語を話した後に、必ず、日本語で同じ事をくり返し、覚えさせた。その時、耳が良い事がわかり、ドレミの音階を教えると、すぐにマスターした。その後、乗り物の写真と名前を教えると、すぐに覚えた。そこで、国旗の写真あてゲームや、日本の県と県庁所在地、地図上の場所をセットで、また、世界の国も首都と、地図、地球儀上の場所も教えた。4歳になると、ほとんど全て覚えた。


 九九を覚えていたので、応用に、かけ算を暗算で、練習してみると、面白いように遊んでくれ、1ケ月で1桁を習得、3問正解するとビスケット1つをご褒美に与えた。暗算も得意になっていった。次に2桁の簡単な掛け算(インド数学)も少しずつ教えた。その中でも、外国語と音程と暗算が特に得意だった。そこで、簡単に日本語と同じ、英語とフランス語、ドイツ語、スペイン語の文を書いたものを家の家庭教師の書生さんに書いてもらい、覚えさせるようにしていった。5歳になる頃には、簡単な日常会話文を英語とフランス語、ドイツ語、スペイン語で言えるようになったのには、父の木下貞夫も驚いた。今度、家族全員で海外旅行に行く時には、七郎も連れて行こうと思っていた。小さい頃から、食力も旺盛で、なんでも食べ、大きくなっていった。特に肉類は好きであった。身体が大きい割に、足も速く、5歳の頃は、兄弟で競走してもいつも一等賞だった。そして、近くの公園を走り回って、元気いっぱいの男の子に育っていった。


 七郎が6歳になった1959年の秋、子供達の見聞を広めるために、米国へ海外旅行を計画した。最初にニューヨーク、次に、ワシントン、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルの約1ヶ月の長期旅行に出発した。ただ、次男の木下七郎だけが、インフルエンザにかかり、東京の家にお手伝いさんと共に残ることになった。その1ケ月後、木下家人達が、米国から、日本へ帰る飛行機が事故で墜落、家族全員が死亡した。木下家では、七郎だけが生き残るという悲劇に見舞われ、天涯孤独の人生を歩むことになった。

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