My ♡sweet

【注:今回、はっちゃけてます(*‘∀‘)】



 わたし、ヤザワミナコ(花も恥じらう女子高校生)普通の腐女子だ。

 どう言う星の巡りか、変な人から変な物をもらった。

 その変な物とは、ノートぐらいの厚さの、でも皮張りのいかにも髙そうな本。


 その本の中には、闇の奥底その深淵から冒涜するような嘲笑をうかべ、忌まわしき名状しがたいモノ共が作り出す、この世界を冒涜するような恐るべき官能(笑)物語が書いてあった。

 そして、わたしはその本の所有者となった。


 と、ここまでは以前のあらすじだ、ん? メタい? ほっときなさい。

 この本の中を見ているわたしには、これをわたしにくれた、アラブ系っぽいおっさんの正体が判ってしまっている。


 あの、千貌にして無貌、這いよる混沌、闇をさまようモノが、どうしてわたしにコレを渡したのかはわからない、たぶんあの邪神の事だ、ただの気まぐれ、面白がっての事だろう。


 取返しに来ないのは、その必要もないからか、わたしが気が狂わないのに呆れているのかもしれない。


 さてさて、今日は日曜日、好きな作家さんの新刊やらなんやら見て回ろうと、一人で家を出たわけだ。

 家を出てしばらく歩いていると、不意に声をかけられた。


「お姉さん、お姉さん」


 ん? わたし? 声のする方を見ると、黒のゴシックドレスを着たお人形のような恰好をした、小学校低学年ぐらいのかわいらしい少女が居た、黒髪黒目だが東洋人の顔じゃない、トコトコとこちらに来る、すごくかわいらしい、そりゃもう、お持ち帰りしたいくらいかわいらしい女の子が居た。


 くりくりと大きな瞳は黒曜石のように輝き、ふっくらと柔らかい頬や、桜色の小さな唇は完璧だ、美少女じゃ! 美少女がおる! ショートボブの髪は、ツヤツヤと光輝き、天使の輪を作っている。

 天使か! 天使なのか! ゴスロリを着た天使か!! 天使光臨か!!! いや、まてまて、落ち着け! わたし! ひっひっふー。


「お姉さんに、聞きたいことがあるんだけど」

 トコトコと、私のそばに寄ってきて上目遣いで話しかけてくる。

 やべぇ! なんだこの可愛い生物、鼻血噴くわ。


 ふっー、と一息吐き出し、ガッシ! と細く小さな肩をつかみ、わたしは声をかける。

「おねぇちゃん」

「え?」


 きょとんとし、そして焦るゴスロリ少女、すかさずもう一押し。

「おねぇちゃんと呼んでみて」

「お……おねぇちゃん?」

「くひっ」

 やべぇ、変な声出た。


「ひっ」っと、小さな声を上げて後退りする少女、だが、ここは攻めるのみ。

「言葉の最後に”のじゃ”を付けて言ってみて」

「え?」


 再び焦るゴスロリ少女、ちょっと困り顔もかわいい。

「の……のじゃ?」

 ふぉぉおおぉおおおおお! のじゃロリキターーーーー(゚∀゚)ーーーーーー!


「ん? このおねぇちゃんに、何が、な・に・が・聞きたいのかな? ん? ん? ん~?」

 ゴスロリ少女を抱きかかえ、プニプニの頬っぺたにスリスリツンツンをしながら攻勢をかける、男なら通報沙汰だが、同性なら大目に見られる! ビバッ。

 至福じゃ! 至福の時じゃ! ちょっと涙目なのがたまらん。

「や、やめるのじゃ、おねぇちゃんやめるのじゃぁ~」

 うほっ、いい少女。


 しばらくゴスロリ少女を堪能したのち、流石に人目が気になるのと、やりすぎたと思って、ジュースとお菓子でご機嫌をとりながら、近くの公園に移動して話を聞くことにした。


 空いているベンチに腰掛け、パックジュースを飲みながら、横で同じパックジュースを「んぐんぐ」と飲んでいる少女に声をかけ色々聞いてみた。


「んー、何でおねぇちゃんに声をかけてきたのかな?」

「んぐっ、おねぇちゃんは、かぁさまと同じ匂いがしたから、きっと探してくれると思ったのじゃ」

 ほうほう、同じ匂いとな? 同じ趣味を持っていそうってことか? して、探し物とな? てことは。 


「ウスイホンッというのが欲しいのじゃ」


 ほほう、その歳でとは、将来有望な……ではなくて。


「それを探すのかな??」

「かぁさまが無くしてしまったそうなのじゃ」


 御母様の蔵書が無くなったと? 


「お金が有れば買えるけど」

 どれ系なのかなぁ? 見繕って買ってあげればいいかな? 同じ作品が好きとわかっても、カップリングの壁があったりするのが腐界というものだ……、まぁ、考えてもきりがない、マイベストを尽くそう。

 とはいっても、すまぬ、おねぇちゃんはお金ないのだ、とほほ。


「お金ならあるのじゃ」と言って、膨れた黒いガマ口を取り出す、妙に似合ってるな。

 おっとと、「悪い人がいるかもしれないから、ちゃんと仕舞って」と言って、仕舞わせる、軍資金はあるみたいだなー。

 ならば。


「よし! 御母様へのプレゼントを買いに行きましょうか、おねぇちゃんに任せなさい!」

 ドン!と胸を叩いて立ち上がる。

「おぉ! おねぇちゃん! かっこいいのじゃ! んぐぐっ」

 まだジュース飲んでた。




 そんなこんなで来ました。

 全国展開しているオタクの聖地『ア○メイ○』。

 ここならば種類も量もそろうだろう、目ぼしいものがなければ『○らのあな』

 にでも行けばいいかな。

 しかし移動で疲れた、隣の美少女は、目をキラキラさせて元気いっぱいなのだが。

 ……と言うか、これだけの美少女連れてるのに、周りの反応なかったなぁ? 人目を集めると思うんだけどなぁ。


 乙女の書籍が並んでいるコーナーに向かい、目ぼしいものを物色する、あの子のお母さんなら、少し古めのもいいかもしれない、同人も少し買ってみるか。


 数十冊を抱えレジに向おうとして、ふと見ると、かの美少女が、ふんすふんすと鼻息を荒くして、なにやら読んでいる。

 あ、ソレはダメだ。

「いけません! あなたにはまだ早いです!」

 素早く取り上げると、山積みの中に戻す。

 ちょっと不満そうに、ふくれているがダメです、R-15だけどな。


 両手に紙袋を下げ、店を出て二人でトコトコと歩いて行く。

 あれ? 何処に向かっるんだっけ?

 そう言えば、この娘の名前も聞いてなかったな。


「そう言えば、お嬢ちゃん、お名前「あ!かぁさま!」あー」

 ゴスロリ少女は、前方の人影に走って行く。


 そこに居たのは、黒のスーツを着こんだ大美人だ、あの娘の親御さんなら当然か。


 八頭はあるスラリとした姿、絹糸のような艶やかな黒髪、切れ長で妖しい色気のある目。

 モデルさんかとも思ったが、胸部装甲が厚すぎる、ぐぬぬ。


 そんな大美人が、わたし前に来て優雅に頭を下げ。

「すみません、娘がご迷惑をおかけしました」

「い、いえいえトンデモない、可愛い子と遊べて楽しかったです」

 多少テンパッたが、何とか言葉を絞りだした。

 そう、それよりも、だ。


「それよりも、お母さん」

「はい?」

「良いご趣味で」

「あなたもね」

 見つめあい微笑みながら、がっちりと握手をする二人。

 なんか通じあった。




「ありがとうなのじゃ、おねぇちゃん!」

 手を振るゴスロリ少女。

「こちらの方も、回収させてもらおうと思ったのですけれど」


 手には、あの本が握られている、おかしい、家の机の中に入れてあったのに。

「この本は面白がって勝手に持って行かれたんですよ、まったくもう」

 クスっと笑いながら、わたしの方に差し出してきた。

「お礼と言っては、恥ずかしいですけど、コレはあなたの物になりましたから」

 そう言ってアノ本をわたしに手渡すと、ゴスロリ少女と手を繋いで帰っていく。


 あ!

 あたしは、ここで気がついてしまった。

 アノ本を持ち出したのは、千貌を持ち、狂気と混乱をもたらすために暗躍する、かの邪神。


 ならば、アノ本を作ったのは?


 思いついてしまった。

 黒き豊穣の女神、千匹の仔を孕みし森の黒山羊、黒い仔山羊たちの母、淫蕩にして淫乱なこの黒き女神の事を。


 シュブ=ニグラス


 かの邪神たちの母にして大邪神の事を。




 黒き豊穣の女神自ら産み出した魔導書。

『ウ=ス』

 もっとも新しく忌まわしい異本、魔導書の名だ。

 この魔導書『ウ=ス異本』は、今だ、わたしの手の内にある。

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