狂える海原

 ぼくの家は、海の近くにあって、よく浜辺や磯で遊んでいたんだ。


 ぼくがいつものように磯で遊んでいると、岩場に空いた大きな洞窟のような所に、人がいたんだ。

 こんな所で遊んでいるのは、ぼくくらいだろうと思っていたから、ちょっとビックリしたよ。


 何で居るのか興味もあって、寂しそうに座っている、その人の近くまで行ってみることにしたんだ。


「カッパさんだ!」

 ぼくは、その姿を見て大声をだしてしまって、カッパさんを驚かせてしまったのか、カッパさんは口を開けて、ぼくの方を見ていたんだけど。

 「大丈夫、何もしないよ、こっちに来るかい?」

 寂しそうな声で、手招きをしている。

 ぼくは、カッパさんの側まで行ってみることにしたんだ。


 カッパさんは、昔話に出てくるような姿じゃなくて、クチバシも、頭にお皿もなくて、顔は魚っぽかった。


 ギョロギョロした目で、ぼくの方を見て。

「怖くないかい?」

 って聞いてきた。

 ぼくは、怖くなかった、それよりも寂しそうなカッパさんが気になった。

「なにしてるの?」

 ぼくの質問に、寂しそうに海を見ながら、カッパさんは答えてくれた。


「私たちはね、人に警告に……話に来たんだ」

「お話?」


「あぁ、人の作った星、人工衛星って知っているかい?」

「うん」

 天気とか予報するやつだよね。


「古くなって動かなくなったソレを、人は海に落としているんだ、自分たちの住む陸に落ちないようにね」

「ほとんどは、燃えてしまうんだが、残って落ちてくるものもあるんだ、海にね」

「知っているだろう? 海には色々な生き物がいる、私たちも、そして……とても恐ろしいモノもね」

 人間の作ったもので、カッパさんたちの住む海が危ないのかな?


「だから私たちは、人に警告しに来たんだ、落ちた星のせいで封印が弱まり狂ったあのお方が蘇らないように」

「だが……それも無駄だったよ、最近落ちた星のせいで……、人は私たちを捕まえ話を聞こうともしなかった……、私の仲間たちは……、私だけは逃げ延びたんだ」

 カッパさんは立ち上がって、キラキラと光っている海の方に歩き出した。


「君のような子供たちが……、出来れば助けたかったんだが、我々も逃げなければ……」

 そう寂しそうに言って、カッパさんは海の中に消えていったんだ。


 ぼくは、夕飯の時にお父さんとお母さんに、カッパさんを見たのを話したんだ。

 そしたら。

「カッパって海に居るの? 川だと思うけど」

「知らないおじさんに付いて行っちゃダメだろ」

 とか言って相手にしてくれない、ホントなのに。


 ぼくが、必死で説明してる時、点けっぱなしのテレビから、ニュースがうるさく流れていた。


『太平洋上――不明の――巨大建造物は――謎――そこから――巨大生物と思わ――交戦――艦隊が――被害――全滅――周辺諸国にも――』


『い――いぁ――くとぅ――ふたぐん――』




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