エピソード3 マジカルガール・森ガール

 光の穴を抜けるとそこは木々が鬱蒼と生い茂る森の上空。いつの間にか夜が明けて朝陽に照らし出される大自然の姿に俺は息を飲んだ。


 ここはどこなのだろうか? パラムは魔女の里と言っていた。そんなのがある場所と言う事は、まさか異世界なのだろうか?


 パラムが魔法の杖を操作してゆっくりと森の中に降りて行くと、ほどなく地面が見えて着地。小さな衝撃すらもなく、どういった原理で浮いていたのかもよくわからないが、本当にパラムが魔法を使ったということなのだろう。


「着きましたよ、かずきさん」

「つ、着いたって……ここが魔女の里なのか?」

「いいえ、ここは魔女の里から少し離れた森の中です」

「なんで里に直接下りないんだよ?」

「それにはちょっと事情がありまして……」


 そう言うとパラムは肩から提げていた布袋の中に手を突っ込み弄り始める。取り出したのは折り畳んである大きな紙、どうや地図のようである。それを見ながらなにかぶつぶつと言っているのだが、俺はパラムに質問をした。


「な、なあ? ここってどこなの?」

「ぐんまですよ。うーん……少し遠かったですかねぇ……」

「そ、そうか。グンマって言う名前の世界なのかここは? それとも国の名前……ぐんま?」

 

 ぐんまだと? どっかで聞いたことのあるフレーズだな? 一体、どこで……。


 俺が悩んでいるとパラムは地図を再び折り畳み布袋の中にもどして呆れ顔で言った。


「はあ? なにを言ってるんですか。群馬ですよ群馬、ここは群馬県の山奥ですよ」

「馬鹿を言うんじゃない。群馬県に魔女の里なんかがあるわけがないだろう? ここはどこか地球とは別の異世界なんだろう?」

「ありますよぉ、群馬なら魔女の里くらい。スマホを見てください、電波入ってるでしょ? 異世界だったらそんなの入らないですよ?」


 確かに入ってる……3Gだけど……。


 というわけで、俺達は群馬県の山奥にある魔女の里へとやってきたわけだが、なぜにこんなところに連れて来られてしまったのかまるでわからない。アパートを全焼させてしまった罪悪感に胸を押しつぶされそうだってのに、わけのわらない状況に置かれて俺は一体どうすればいいんだ。


「じゃあ、行きましょうか。この先に目的地があります」

「徒歩で行くのか? 魔女の里に」

「これから向かうのは魔女の里ではありません。事情があって別の場所に向かいます」

「一体どこに俺を連れて行こうってんだよ? 子作りはどうしたんだよ?」


 別に子作りをしたいわけではないが、さっきまでとなんだか目的が変わっているようなパラムの様子に、なにげなく言ってみた。するとパラムは一瞬呆けたような表情になるのだが、みるみると喜びを隠しきれない様子になり俺に飛びついてきた。


「やっとその気になってくれたのですねっ! いいでしょう! でゅふふふふぅううっ!すぐにしましょうやりましょう。私は青姦でも大歓迎ですよぐへへへへへえええええっ!」


 き、きめえええええええっ! こいつ、なんか笑い方が気持ち悪りぃいいいっ!


 いきなり発情しだしたパラムを引っぺがして、そんな獣の様なことができるかと。婦女子ならばもう少し恥じらいをもちなさいと説教してやるのであった。


「まったく。その気にさせておいてお預けだなんて、かずきさんもいけずですねえ」

「おまえなんなんだよマジで。言っとくけど、男は普段エロいことをしたいと思ってても、女子の方からそうがつがつ来られると結構引くんだからな」

「やれやれ、本当に最近の草食男子ときたら。これだから幾つになっても童貞なんですよ。据え膳喰わぬはなんとやらです」


 いやいや、未成年のおまえに言われたくねえんだけど……ん? そういやこいつ何歳なのだろうか? 見た目からして中学生くらいだと思っていたけれど、実は魔法を使って若返っているだけだったりして。魔女と言うくらいだから、もしかしたら数百歳のロリババアかもしれない。


「ところで、おまえって幾つなんだ? 未成年だったら子作りなんてできないぞ?」

「大丈夫ですよ。ちゃんと法的にはOKな年齢ですから」

「さっき、自分は魔女だから法律なんて及ばないとか言ってたくせに。まさか、魔法の秘薬とかを使って若返ってて、実は100歳越えてますとか言わないだろうな?」


 その瞬間パラムは立ち止まると冷や汗を流しながら俯いた。


「そ、そんなわけ……な、ないじゃないですかぁぁぁぁぁ」


 俺から目を逸らして明らかに動揺した様子で答えるパラム。こいつ嘘を吐くのが下手だな。


「だ、大丈夫です。私は正真正銘の、は、二十歳ですから! かずきさんと結婚して子供を作るのなんて全然大丈夫なんですよぉぉおおっ!」

「いいんだよ、無理すんなよ。そんな中学生みたいな見た目の成人が居るかよ」

「なあっ!? ちゅ、中学生? 私のどこが中学生なんですかあああああああっ!」

「おまえ俺の部屋で自分のこと美少女とか言ってたじゃねえかよっ! 言ってることがさっきから支離滅裂なんだよっ!」

「きいいいいいいいいいっ! 男の癖に細かいですねっ! だからモテないんですよおっ!」


 そんなこんなで俺達は言い争いをしながら森の中を進むと、小さな小屋の前にやってくるのであった。




 つづく。

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