【論文抜粋記事③】

・愛知県立南尾張第三高等学校 三年一組 ミナ・シライ著

  個人研究中間報告【シナプスの個体識別法と拡散技術】より抜粋


 イザナギプロジェクト以降、MR技術は大きく進化している。

 ペッカー氏により開発された初期型のMRS端末は、脳に直接埋め込むというものであったが、画期的な発明であった半面、大がかりな外科的手術が必要な点が問題となっていた。それは、術後にレコードの増設やデバイスの交換の際にも、初期取り付けと同様の手術が必要となってしまう、安全面と費用面の問題で、大きく世に広げることは叶わなかった。

 しかし二一〇九年、大手国内企業二社の開発により状況が一変することになる。

 一社目は、国内通信機器メーカー最大手である不二通信。

 もう一社は、MRS業界への参入を計画していた、自動車産業世界最大手の西三河自動車である。

 二社は共同出資により、日本MRD研究所(JMI)を設立した。

 そして二一一三年、JMIは現在一般化している外部通信型のRデバイスの開発に成功したのであった。

 これは、記録端末を直接脳内の入れていた従来の形式と異なり、海馬へシナプス波拡張発信機を取り付けることで、外部デバイスへの記録を可能としたものであった。

 そのため、メモリの増設やスペックの変更が容易になり、何事もなければ、一度の処置で生涯通信が可能となったのである。

 この技術は、日本政府によるMRS総普及化への道を作ったといっても過言ではない。

 また、副次的な産物として、シナプス波を直接電波に乗せることで、音声言語を使わずに直接イメージを送信できる、シナプス通信などの技術にも発展していった。

 次の課題は、現在でも各研究所や企業が開発を進めている、シナプスの個体識別技術の開発である。これが完成すれば、オンラインではできなかったあらゆることが可能となってくる。端末の力なく他者とリアルタイムに通信することや、個人認証からキャッシュレスで買い物をすることも可能となる。まさにSFの世界の技術である。半面、個人のプライバシー問題、特許問題に付随するセキュリティー対策に関しては、まだまだ不安材料が山積みである。

 次項では、現行の技術をふまえ、開発可能な個体識別方法に対する、各方面で起こりうる問題に対するセキュリティー対策に関して考えてみることにする。

 まず初めに、・・・・

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