本編⑥ 研究室の仲間たち
講堂での説明会が終わると、生徒たちはそれぞれで移動をはじめていた。
ギンヤ達は先程の説明で、これから加わることになる研究室ごとに、わかれて合宿を行うとの説明を受けていた。
大学には、大小からなる二百個ほどの研究室が存在しており、それぞれが独自に研究や開発を行っている。
同じ研究室の中でも個人単位で研究を進めることもあれば、いくつかの研究室と合同で研究を行い、新しい技術の開発を行うこともある。
そんな中でも、花形はやはりCOTを利用した開発に携わる研究室で、人気もあるため、結構な大所帯だったりもするのだが、あいにくギンヤやカズヤの研究テーマは、少し特殊な研究であるため、研究会の規模もそんなに大きなものではないはずである。
ギンヤはひとまずカズヤと別れ、集合場所に移ることにした。
集合場所の教室に着くと、すでに何人かの生徒が到着していた。
ギンヤが到着したのを見ると、白衣を着た男性が話し始めた
「四人おるな。うちの研究会の新人はこれで全部や。ほな簡単に自己紹介でもしとこか。おれは四回生のヤマダや。よろしくな。来年は修士に進むことになるから、研究室でしか会わんやろうけど、わからん事あったら何でも聞いてな。」
少し早口でヤマダが話すと、隣にいた白衣の眼鏡の男性も自己紹介を始めた。
「どうも、トヨシマです。現二回生で、今度三回生になります。
講義はほとんど履修済みなので、あまり学部棟では見かけないかと思います。
ゲーム同好会にも入っているので、興味のある人は言ってくださいね。」
トヨシマは自分のあいさつを終えると、近くにいた新入生の女子に自己紹介をするように促した。
「はぁい、私は、南尾第三高校から来ました、
ミナ・シライです。
運動が苦手です。
個人研究のテーマは、【シナプスの個体識別法と拡散技術】です。
よろしくおねがいします。」
ミナは身長百六十位、落ち着いた感じで、黒のスキニーパンツをはいていた。
背中まで届いいる長い髪を首の後ろ当たりで束ねた、カワイイ感じの子だ。
少し独特な間で、ゆっくりと、しかしはっきりと話した。
ミナの自己紹介が終わると、自然と隣から挨拶が続いた。
「キヨコ・ヒウチですっ。
東三第七高校から来ました。
特技は暗記です。
研究テーマは、【香りが及ぼすシナプスの速度変化】です。
宜しくお願いします。」
キヨコは、ミナより少し高いくらいの身長で、ジーンズをはいた活発そうな女子だ。
少し肩にかかる位の髪とシャープな感じの眼鏡が大人っぽさを醸し出している。
心地よいテンポで、はきはきと話す声は、どこか聞き覚えのあるような声だ。
「セイジュウロウ・ゴダイゴ、都立中央第三高等学校出身です。
高校までは剣道部やってました。三段です。
個人研究テーマは、【通信技術向上時の問題点とセキュリティ】です。」
セイジュウロウはデカかった。百八十のカズヤよりも大きそうだ。
さすがに武人だけあり、落ち着いた感じではっきり話す。
「東三河第六高等学校、ギンヤ・ハズマです。
バレー部は高一で辞めました。
研究テーマは、【Rデバイスによる生体海馬への影響とその変化】です。」
ギンヤが最後に自己紹介をすると、なぜかキヨコが険しい顔で睨みつけてきた。
(えっ、自分なんかいったか?)
ギンヤが少し驚いてキヨコを見ると、キヨコは慌てて目をそらす。
(何だったのだろう。)と思っていると、ヤマダが皆に声をかけた。
「ほんま、かんたんやなぁ。
まぁいいわ。細かいことは、後のミーティングで話そか。」
そう言い終わると、ヤマダとトヨシマは皆を駐車場へ移動するよう促した。
駐車場には一台のワゴン車が停めてあり、全員でそれに乗り込む。
その後、トヨシマの運転で合宿所に移動することになった。
ギンヤが空腹感を感じ時計を見ると、時間は間もなくお昼になろうとしていた。
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