いいなぁ
ジョエルが言ったように、異能者であってもその事実に対する理解が及ばない点があるということは、重々承知している。
「よし!そうとなれば行動開始だな!知り合いに異能者に詳しいヤツはいるのか?」
溌剌とした昶の問いに、あかねは思案する。
「ジョエルやアーネストさん達以外では、しろちゃんとか。あとは……いることもないけど」
ある人物が浮かび上がる。
――頼りにはなるけども。素直に教えてくれるかどうか。
何とも言えない表情から悟ったのか、昶が心配そうに尋ねる。
「……微妙なヤツ?」
「んー。まぁね」
「でも聞いてみる価値はあるんじゃね?」
「まぁぼちぼち」
適当にはぐらかして、あかねはぼんやりと空を見上げる。
心持ちはそこまで晴れているわけではないが、空はどこまでも青い。
「……なぁ」
「うん?」
「そのチームってヤツ。オレでも入れんの?」
「多分。どのチームにも所属してないなら」
不意に尋ねられ、あかねは不思議に思いながら答える。
昶の顔に視線を向ければ、初めて会った日にも見た悩ましい表情を浮かべいた。
陽気で人の気持ちを察する事に長ける彼が、時折見せるその表情は、確かに気がかりだった。
それが何を意味するのか分からないが、彼が隠し背負っているものなのだろうと、あかねは思った。
「オルディネは崖っぷちだから、誰でもウェルカムパーティじゃない?」
「なんだよそれ」
昶はそう言って屈託なく笑う。
先ほどの悩ましい姿が嘘のように、いつもの彼に戻っていた。
「昶はチームに入りたいの?」
「よく分かんね。興味はあるけどな」
あやふやな物言いだが、あかねは彼が入ってくれれば心強いと一人でに思う。
だが本人に明確に入りたいという意志がない以上、無理強いする事はしない。
「そう言えば、山川さんも異能者だったんだよな。話してみた?」
「ちょっとね」
「いいなぁ」
昶は途端に情けない声を出す。
「男子達の間で、かなり人気なんだぜ。学年一の美少女とかってさ!」
「ほー。男子は早々とそんな話題で盛り上がってるのね。」
「お、オレは言ってないからな!好みだけど!ドストライクだけど!」
「はいはい」
白い目を向けながらも、あかねは軽く受け流して窓越しの景色を眺める。
変わらず晴天の空に、生徒の賑わう声がどこからともなく聞こえる。
下を見れば、確かに先程登った塀が見える。
昶はこの位置から見ていたのだろう。
「今日って三限で終わりだよな?」
「確かそう……ん」
不意に携帯が鳴る。
サイレントにしてあったはずなのにと、不思議に思いながら画面を開くとメールを受信したと表示されていた。
しかしそれは知らないアドレスからで、迷惑メールかと思いながら開けてみれば、用件の下に名前が書かれており、その名を見て思わず笑みが零れる。
「なんだその反応!ハッ…もしや男!?」
「そうだね」
送られてきたメールをニヤついている昶に見せると、そこに書かれていた文章を読み始める。
「“まだ授業中かな?今日は学校まで私が迎えにいくから、待っていて。この事はみんなには秘密で。アーネストより”……これってデート!?」
「多分違う。でもそうだったら良かったのに」
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