エピローグ第三話

「ハヅキ君。きみの寿命は」団長が言った。「どうやらあと三か月程度らしい」

 話がある、と退院したばかりのハヅキを呼び出したのは団長だった。執務室に入ってから無言の時間が流れ、何度目かの逡巡を迎えてから放たれたことばは至極単純でわかりやすいものだった。それでも、

「言ってる意味がわかんないです」

 ハヅキはそう返した。

「春の健康診断では何も問題はなかったはずなんだ」と団長。「しかし、きみが寝ている間に行った検査で内気(オド)の量を調べてみたところ、ひと月前と比べて激減していることが判明した」

 内気の量は残りの寿命に比例する。内気がなくなってしまえば、生命を維持することができずに人は死を迎える。

「考えられる原因があるとするならば、ヘクセ族だろう」

 彼らはヒトの内気を奪い、自らの命に変える。

「覚えがあるだろう」

 ハヅキは答えなかった。ただ黙っていたが、団長はそれをショックからことばを失ってしまったと捉えたようだった。

「いま、私も解決法を探している」

 その一環として、

「地下に拘留しているカミラにも話を聞いているんだ。そして、彼女はきみと直接話したいと言っている」

 どうする、と団長が訊いた。カミラとの対面は危険だと思っているのだろう。

「行きます」ハヅキは答えた。「大丈夫ですよ、きっと」

「衰弱しているとはいえ強かな奴だ。くれぐれも気をつけてくれ」


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