エピローグ第二話

 朝の陽ざしがカーテンを透かしてハヅキを照らし出したころ、ギルドのほうがにわかに騒がしくなっていた。

 目を覚ましたハヅキは首だけを傾けて廊下を見やる。ばたばたと駆けてくる足音。静かに開いた扉から一人が入室し、カーテンをめくって中を覗いてきた。

「おはよう、パトリ」

「ハヅキ、起きてたのね」

 ほっと息をついたパトリはカーテンを開け、枕もとに来た。

「どうかしたの? 騒がしいみたいだけど」

「どうもこうもないわよ」とパトリ。「ヘクセプトの一員として拘留してたアルミラが逃げたみたいでね。ギルドじゅうがもうてんやわんや」

 パトリは肩をすくめ、ハヅキを見て首をかしげた。

「驚かないのね」

「驚いてるよ? うん」

 ハヅキが上体を起こそうとすると、パトリがそれを制して彼女を寝かせる。

「検査が終わればもう、今日には退院できるみたい。朝食まで時間もあるし、もうすこしゆっくりしてなさいな」

 あら、とパトリがハヅキの顔を見て言った。

「顔の傷、綺麗に治ったじゃない。一生残るとか言われてたのにね」

 うん、とハヅキは頷いた。アルミラさんが治してくれたの、と言いかけたことばを飲み込んで。

「ココが見たら驚くわ、きっと。あなただってわからないんじゃない?」

「せっかく懐いてくれたのに、振りだしかぁ」

「冗談。あなただってわかったらすぐに飛びついてくれるわよ」

 だといいけど、とハヅキは目を閉じる。

「おやすみ」

 パトリが静かに病室から出て行った。

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