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2「千客万来、百鬼夜行」(1)




 なんだかんだ言って僕は、そんなに頭が良くない。



 数学ができると言っても、それはあくまで、稼げるからやっているだけだった。本当は、なにがどうしてこう答えが出るとか、伝統や歴史がどうとか、そのあたりは実は全然理解していない。それでも「人よりはセンスがある」ということにはなるのかもしれないし、贅沢な悩みと非難されるのかもしれないが、どのみちセンスだけでやっていることには、遅かれ早かれ限界が来るものだ。そのうち教授なんて大それた地位は手放すことになるだろう。……それに僕は、頭がいいもの同士が固まって飲みに行ったり、デカルトやアリストテレスとか、とっくに死んだ人間の話をして「議論」という名の無駄な喧嘩をしたりするのは好きじゃないのだ。僕というどうしようもない人間は、眠れない夜に徹夜で数独をしたり、叔父たちと夜中じゅうドライブしたり、そんなしょうもない悪いことが好きな、普通の人間だった。


 そういう訳で、その日も寝不足で。

 そして誰もが知っている通り、「寝不足」というのは、「災いの元」となるのだった。



 



 


 

 

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