1「窮鳥と天才、あるいは安物なのにウザいくらいしっかりしたロープ」⑶
テレビを点けてみると、何やら騒がしい生放送をやっていた。夜の9時というこの時間帯なのを考えると、結構大々的な枠の番組らしい。討論バラエティ……とでもいうのだろうか。一般の若者と、各専門の大学教授が対話する、というものらしい。まあ「大学教授」といっても、堅苦しい感じはあまりなく、いかにも「テレビ向けの人間」といった顔ぶれが並んでいた。まあ、面白くなくはないが、普通といえば普通の番組、だ。
だが、その大学教授の中に、とりわけ若い顔立ちの男がいたのには、少し驚いた。
こう言っては悪いが、どう見ても一人だけ浮いている。年齢が若すぎるのだ。何せ、自分とそう変わらない年齢だろうと思うほどの若さだ。仮に童顔なのだとしても、他の先生方が皆どう見てもアラサーかアラフォーなのを考えると場違いな感じが否めない。どの年代にも「天才」というのはいるのだろうが、これでは少しかわいそうな感じもしなくはない。プロデューサーの作為を感じる。
彼が一体何の専門家なのか少し気にはなったが、番組の序盤を見逃してしまったため、紹介のシーンは終わってしまったかもしれない。まあ、これだけ浮いていればいじられるのが関の山だろうし、言葉は悪いが、どうせ「そういう枠」で呼ばれたのだろう。
「天才も大変だよな」
独り言が多くなる。長いこと一人でいたせいだろう。
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