a rope

1「窮鳥と天才、あるいは安物なのにウザいくらいしっかりしたロープ」⑴



 

窮鳥きゅうちょう懐に入れば漁師も撃たず」ということわざがある。


 窮鳥というのは文字通り、「窮地に陥った鳥」。

 鳥を撃つのが仕事の漁師でも、困った鳥が助けを求めて懐にとびこんでくれば、かわいそうに思って殺したりはしない。そこから転じて、「窮地に陥ったものがいたら、どんな理由があろうと助けてあげなさい」という意味のことばとして使われるらしい。


 けれど……。



 それは流石に、絵空事だ。



 梁にロープをくくりつけながら、俺は、そんなことを考えている。







 

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