フォルグの里編

第76話:バランス栄養食

 ランディアは町に残り、今までの〝償い〟をしていくと言っていた。

 兄のガルディアが迷惑をかけた分、弟のランディアも責任を負うのが当然だと思ったんだろう。


 後から知ったことなのだが、以前からガルディアが壊した物などの修理を手伝っていたらしい。

 それ以外にも色々と貢献していたらしい。

 それもあってか、町の人は意外とランディアに好感を持っていたみたいだ。

 一部の人はそうでもなかったみたいだけど。

 ガルディアが釈放されるその日まで、ランディアもしばらく忙しい日々が続くだろう。




 俺たちは既にカルヴィン町を離れ、馬車で移動中だ。


 馬車の中でランディアが言っていたことを思い出す。

 俺が魔法を使えないのは、加護の種類が分からないからだと言っていた。

 ならばどうしたら知ることが出来るのだろう。


 なんとなく感じることが出来るみたいなことを言っていたが、何も感じない。

 そもそもやり方が曖昧すぎて、どうすればいいのかが分からない。


 それならいっそのこと、総当たりでやってみようと思い、色々な魔法を試してみた。

 火を出すことはモチロンのこと、氷を出そうとしたり、雷を出そうとしたり、風を起こそうとしたりしたが、どれもハズレだった。


 もしかしたらもっと違う種類の魔法かもしれないと思い、発想を変えてみた。

 空を飛ぼうとしたり、怪我を治療しようとしたり、ゲートを出そうとしたり、ビームを出そうとしたり、時間を止めようとしたり、時間を消し飛ばそうとしたり……

 思いつく限りあらゆることを試してみた。

 が、全てハズレだった。


 ランディアと同じような魔法かもしれないとも思ったが、やはり違っていた。

 これ以上は何も思いつかず、今は保留にすることにした。

 いっそのことマナに聞いてみようかと考えたが、無駄と思い諦めることに。

 返答が分かりきっているからな。


 まぁ俺にはカタログがある。

 魔法が使えなくてもどうってことはない。

 いつかは使えるようになるはずさ。

 …………たぶん。


 それはそれとして、小腹が空いてきたな。

 色々考えていたせいで、カロリーを消費してしまったようだ。

 何か手軽に食べられる物が欲しいな。

 あっそうだ。

 たしかアレがあったはず。


 荷物をあさり、とある物を取り出す。


「なぁギンコ。よかったらこれ食ってみないか?」

「? なんですかそれ?」


 俺が取り出したのは、小さな箱に入ったとある食品だ。

 中身を取り出し、ギンコに分けた。


「ほい。けっこう美味いぞこれ」

「あ、ありがとうございます。でも初めて見る食べ物ですね。ザラザラしてて少し堅そう……」

「まぁ食ってみれば分かるさ」

「では頂きますね」


 ギンコが一口食べる。

 口を動かしていくうちにどんどん表情が和らいでいき――


「! こ、これとっても甘くて美味しいです!」

「だろ? なかなかイケるっしょ」

「はい!」


 今渡した物。

 それは――カ○リーメイトだ。

 これなら手軽に食べられるし、ある程度の栄養も補える。


 さて。俺も食おうかな。


「な、なぁ。それってそんなに美味しいのか……?」


 食べようとした時、対面に座っていたヴィオレットが話しかけてきた。


「ん? ヴィオレットも食べる?」

「え? い、いいのか?」

「うん。まだあるしな。ちょい待ってね」


 同じ物を取り出し、中身を空けてヴィオレットに手渡す。


「ふむ。これはクッキーか?」

「まぁ似たようなもんかな。とりあえず食べてみなよ」

「うむ。では頂くとしよう」


 そういって一口食べた。


「……おお! 確かに甘くて美味しいな! これはまさかちょこれいとなのか?」

「あー。確かに味は一緒かもね」


 俺があげたのはチョコ味だしな。


「ふむ。素材にちょこれいとを使っているというわけか」

「そんな感じ」

「なるほど……」


 気に入った様子でなにより。

 ギンコも美味しそうに食べているし、これにして正解だったな。


「そういえばこれは何という食べ物なんだ?」

「これはカ○リーメイトって呼んでる。けどクッキーでもいいと思うけどね」

「変わった名前なんだな……。そ、それよりもちょっと相談があるんだが」

「ん? どうしたの?」


 あ。言いたいことが何となく分かった気がする。


「そ、その……こ、これはまだ余っていたりはしないのか?」

「まだあるといえばあるけど」

「よ、よければなんだがな――」

「もしかしてまた分けて欲しいとか?」

「う、うむ。ザックリ言うとそんな感じだ」


 やっぱりね。

 チョコを食べた時もそんな雰囲気出していたからな。

 本当に甘い物が好きなんだな。


「手元にはあまりないけど、ギンコの件が終わったら沢山用意するよ。それでいい?」

「ほ、本当か!? いやー話が早くて助かる! 日頃からこういう物が欲しいと思ってたところなんだ!」

「そ、そうか……」

「ヤシロと知り合えて本当によかった。礼を言うぞ!」


 すごい喜びようだな。

 そんなに気に入ったのか。

 次は違う味のタイプを手に入れることにするかな。


 後で御者のおっさんにも分けてあげることにしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る