第66話:おっぱいの悩み

 あの後はギンコを背負って宿へ戻り、すぐに寝かせた。

 本人は大丈夫だと言っていたが、さすがに不安なので今日一日はそのまま寝るように言い聞かせた。


 次の日。

 ギンコは一晩寝たらケロリと治っていた。凄まじい回復力だ。獣人ってのはみんなこうなんだろうか。

 ともあれ、大事にはいたらなくてなによりだ。


「昨日は災難な一日だったな。ごめんなギンコ。俺のせいであんな目に遭うなんて……」

「い、いえ。こっちこそ謝るべきですよ。私のせいでご主人様を巻き込んだみたいになっちゃいましたから……」

「ま、まぁお互い無事でよかったよ」

「ですね。これもあのプリ――じゃなかった。ええと確か……今はマナさんでしたっけ。あの人のお蔭ですよね」

「だな。人っつーか精霊みたいだけど」

「そ、そうでしたね」


 これもマナが居てくれたから助かったようなもんだ。マナが現れなかったら、今頃俺はまたあの世逝きだっただろう。


 しかしあのエルフはどこに行ったんだろうな。気づいたら居なくなっていたんだよな。

 そういや加護を失ってからはエルフの態度が急変してたな。あの落ち込みっぷりはすごかった。今にも自殺でもしそうな雰囲気だったからな。


 精霊の加護を失うってのはそんなにショックなんだろうか。

 確かエルフってのは生まれつき加護があるんだっけか。その加護がある日突然無くなるんだ。エルフにとっては手足を失うぐらいの感覚なんだろうか。それならあれだけ絶望するのも理解できる。

 ……やめやめ。あんな奴のことを考えるのはよそう。

 どっちみち魔法は使えなくなったんだ。もう関わってくることはないはず。


「まぁこれでエルフの脅威は無くなったんだ。この町も平和になるだろう」

「ですね。もし何かしてきたら、私が守りますから安心してください!」

「お、おう。でもあんまり無茶はするなよ? 死んだら元も子もないんだからな」

「大丈夫ですよ。ご主人様を置いていなくなったりしませんから」


 本当に大丈夫かな……?

 まぁ昨日みたいに、命がけの行動はもうしない……はず。

 けど俺だって何も考えなかったわけじゃない。昨日ギンコが寝た後に、色々な物を・・・・・カタログから手に入れている。できれば使う日が来ないことを祈るが。


「ぷりん」

「ん? ああ。そっか。約束だったもんな」


 いつの間にかマナが現れていたが、今さら驚かない。もう慣れたもんだ。


「ちょい待ってね……ほらよ」

「ん」

「お代わりも自由だからいつでも言ってくれよな」

「ん」


 この子のお蔭で助かったんだ。今日ぐらいは何杯でも食わせてやるつもりだ。


「つーか立ってないで座ったらどうだ?」

「……?」


 マナはいつも立ったまま食っているんだよな。基本的には1杯食べたら消えるから、立ったままでも問題無かったけどね。


「今日はサービスしてお代わり自由なんだ。座ってから食えばいいのに」

「わかった」


 マナはゆっくりと移動した後に座った――


「んなっ!?」

「!?」


 ――俺のヒザの上に。


「ちょ、ちょっと待て! なんで俺のヒザに座るんだよ!?」

「だって、座れって、言った」

「だからってお前なぁ……」

「?」


『何か間違っている?』とでも言いたげな顔でこっちを見るなよ。

 なんだろうなこの子は。そういや前にも全裸になろうとしてたっけ。精霊ってのは感性がズレてるもんなのか?


 しかしあれだ……マナのおっぱいは近くで見るとほんとにデカいな。このサイズならG……いやもっとあるな。なかなかの迫力だ。

 巨乳の人は真下が見えないって聞いたことがあるけど、本当みたいだな。

 マナの肩越しから真下を見てみるが、そこには大きな山・・・・が2つあるだけだ。巨乳だと色々と大変そうだ。

 精霊ってのは皆このくらいのサイズなんだろうか。


 うーむ本当にデカい。

 そういやマナはブラとかは――


「ご~しゅ~じ~ん~さ~ま~! どこを見ているんですか!?」

「え!? いや、その……」

「むぅ~!」


 やっべ。つい夢中になってガン見しすぎた。


「こ、これはだな、その、なんというか……」

「――もん」

「えっ?」

「私だって……大きくなるもん……」


 ギンコは自分の胸元を見ながら何かつぶやていたが……聞かなかったことにしよう。


「むぅ~……」

「…………」


 と思ったら今度はマナを睨み始めた。


「あ、あの! マナさん!」

「なに」

「その、なんといいますか……そのぅ……」

「?」

「お、おっぱいって……どうやったら大きくなりますか!?」


 ギンコの言った内容が理解出来なかったのか、答えずに首をかしげるマナであった。


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