第41話:プリン星人ちゃん(仮)
な、なんだこのおっぱいの大きい少女は……?
それにしてもあまり見かけない格好をしているな。なぜなら白いワンピース着ているからだ。
さらに言えば腰まで届きそうな綺麗な長髪だけど、頭には花が複数付いている。あれはこの子なりのファッションなんだろうか。
というかいつから居たんだ? 全く気付かなかったぞ。
「き、君は誰なんだ……?」
「…………」
「あのー……」
「…………」
へんじがない。
どうやら俺の手に持っているプリンを凝視しているみたいだ。
「も、もしかして……プリン食べてみたいとか?」
「……くれる?」
「あ、ああいいぞ。ちょっと待ってて」
カタログから同じプリンを購入し、スプーンと共に手渡した。
「ほら。それがプリンだよ」
「…………」
謎の少女は手に持ったプリンを見つめた後、一口食べた。
「…………!」
「ど、どうだ……?」
「…………」
「…………」
うーん。一言も喋ってくれないな。
黙々とプリンを食べ続けている。
「ギンコはこの子のこと知ってたりしないか?」
「い、いいえ。私にはさっぱり……」
「だよなぁ……」
本当に何者なんだろう。というかいつの間に現れたんだろうか。
おかしいな。今居る場所は見晴らしがいいから、人が近づけば気付くはずなんだけどな。こんなにも近くに寄ってくるまで存在に気がつかなかったとはな。プリンに集中しすぎてたか?
考えても仕方ない。直接聞いてみるか。
「なぁ。君はどこから――…………!?」
あ、あれ!?
「ギ、ギンコ! 今の子はどこに行った!?」
「え? どういう意味――あれ?」
いつの間にか居なくなっている。
そんな馬鹿な。たった今俺の横に居たはずだ。なのにちょっと目を離した隙に姿が見えなくなっている。
2人で周囲を見回してみたが、結局見つけることはできなかった。
「な、なんだった今の子は……」
「さ、さぁ……」
幻覚でも見てたのか?
いや、ギンコも姿を確認できていたみたいだし、幻覚ではないか。
それにプリンが入っていた空の容器も残っている。つまり実在していたということになる。じゃあどこに行ったんだろう。
いきなり現れたと思ったら、突然消えてしまったな。狐に化かされた気分だ。
「と、とりあえず宿に戻るか……」
「そうですね……」
気にしても仕方ない。さっさと後片付けを終わらせてしまおう。
翌朝。
まだ寝ている時に、体が揺さぶられた気がしたから目が覚めてしまった。
こんなことをするのは誰なんだ……と思ったけど、よく考えたらギンコしか居ないんだよな。
まぁいいや。さっさと起きよう。
そう思い、体を起こして隣を見てみるが――
「…………」
「…………」
そこにいるのはギンコではなかった。
「き、君は……昨日の……」
昨日、突然現れたおっぱいの大きい謎の少女だった。
「ど、どうしてこんな所に居るんだ?」
「…………」
な、何でこの部屋に居るんだ?
というか、どうしてこの場所が分かったんだ?
一言もこの宿に寝泊りしてるって言って無いはずだぞ。
「な、なぁ。一体いつからここに――」
「ぷりん」
「……は?」
プリン?
いきなり何を言い出すんだこの子は。
「ちょっと聞きたいんだけど、何でここに居るんだ?」
「ぷりん」
「そうじゃなくて。君がどうしてこの部屋に居るのか――」
「ぷりん」
「というかどうやってこの場所を突き止めたんだ?」
「ぷりん」
「いや、だから――」
「ぷりん」
「あの……せめて名前だけでも――」
「ぷりん」
「…………」
「ぷりん」
な、なんだこの子は。話が全然通じないぞ……
そんなにプリンが食べたいのか?
まさかプリンが食べたいからここに来たのか?
「プリン上げたら教えてくれるか?」
「…………」
無表情のまま俺を見つめる謎の少女。
駄目だな。これはプリンを渡さないと何も話してくない気がする。
カタログから昨日と同じプリンを購入し、謎の少女に手渡した。プリンを食べ始めると同時に、まだ寝ていたギンコが目を覚ましたみたいだ。
「ふぁぁぁ……おはよーごじゃいます……って、あれ!?」
さすがに驚くか。そりゃそうだ。起きたら俺以外の人が部屋に居るんだからな。
「あ、あの……いつの間に部屋に入れたんですか……?」
「あーなんというか……」
ギンコに近づいて事情を説明することに。その間も謎の少女はプリンを食べ続けていた。
「なるほど。起きたらそこに居たわけですね……」
「そうなんだよ。俺もわけが分からないんだよ……」
まさかとは思うけど、昨日から俺らの後を付いてきたとか? それなら居場所を特定できたのも納得がいく。
けどそんな気配はしなかったし、何よりどうやってこの部屋に入れたのかが不明のままだ。
本当に何者なんだこの子は……
しかし正体を聞こうにも、さっきの様子だと何も話してくれない気がする。
ふーむ。そうだなぁ……
「ギンコ。あの子が何者なのか、聞いてきてくれないか?」
「わ、私がですか?」
「俺が聞いても全然話してくれなかったんだよ。もしかしたらギンコ相手なら喋ってくれるかもしれん」
「……わ、分かりました。やってみます」
ゆっくりと立ち上がり、謎の少女の前まで向かっていった。
「あ、あの!」
「…………?」
お、プリンを食べるのを中断してギンコに振り向いた。
これはいけるか?
「あ、あなたはどこから来たんですか?」
「…………」
「どうやってここに入ってきたんですか?」
「…………」
「…………」
「…………」
けど何も喋ってくれない。
「せ、せめてお名前だけでも聞かせてくれませんか?」
「…………ぷりん?」
「い、いえ……そうじゃなくてですね。あなたの名前が知りたいんですけど……」
「…………」
「…………」
見つめ合う2人。
「…………」
「うう………」
「…………」
「ご、ご主人様ぁ……」
涙目で戻ってきた。それと同時にプリンを食べ始める謎の少女。
うーむ。ギンコでも駄目だったか。
結局正体は不明のままか……
もういっそのこと、このまま放置するのがいい気がしてきた。プリンが食べたいだけみたいだし、なら気にせずにそのままにしておこう。
「と、とりあえず店の準備をするぞ」
「わ、わかりました」
今日も塩を売るために、露店の準備をすることにした。
準備が終わった後に気付いたが、いつの間にか謎の少女が消えていた。
この部屋から出るにはドアか窓しかない。だけどドアが開いた様子も無かったし、音も聞こえなかった。窓付近には俺らがいるので、近づいてきたら間違いなく察知できるはずだ。
つまりだ。俺らにバレずにこの部屋から出て行くのは不可能なはずなんだ。けど現にさっきの少女の姿は見えない。
どうやってここから抜け出したんだ……?
あの子はもしかしたら、プリン星からやってきたプリン星人が化け出た幽霊なのかもしれない。
これからはあの子のことは〝プリン星人ちゃん(仮)〟と呼ぶことにしよう。
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