第23話:これからの目標
食事も終わり、その後はすぐに部屋へと戻った。
だけどすぐに異変に気付く。
「……明るい?」
窓の外を見ると、既に日は沈んでいて月明かりが差し込んでいた。けど月明かりにしては明るすぎる。まるで都会に居た頃のように外が明るい。どういうことだこれは。
気になって窓に近づいて外を見てみた。
すると――
「なんじゃありゃ……」
光の正体。それは街灯だったようだ。5~6メートルぐらいの長い棒が設置してある。
一番上の部分に何かが置かれていて、それが明るく照らしているみたいだ。
しかし眩しくて何が光っているのかはよく見えない。
あれはなんだろう? まさか電球?
いやいや、そんな馬鹿な。この世界にも電球なんて物が存在するのか?
うーむ。気になるけど……まぁいいや。明るくて便利なことには変わりない。月明かりのみよりマシだしな。
とりあえず今日はもう寝るか。昨日は馬車の中で寝たからあまり眠れなかったんだよな。
軽くアクビをしながら硬いベッドの中に入り、掛け布団を被った。
今夜は良く眠れそうだ……
翌朝。
起きてからベッドの座り、これからのことを考えていた。
とりあえず念願の町に来れたのはいいが、これからどうしようか。俺はこの世界でまったりと自由気ままに過ごしたい。誰にも邪魔されずに好き勝手なことをしたい。
その為には……まず家が必要だな。家がないと話にならない。いつまでも宿屋暮らしってわけにはいかないしな。
よし決まった。当分の間は家を買うことを目標に動こう。ならば今必要なのは家を買う為の資金集めだな。
「よし、んじゃ町中散策だ」
立ち上がった瞬間、腹の音が鳴った。
そういや朝食まだだったな。とりあえず今は腹を満たすか。
カタログから購入したサンドイッチを食べた後、部屋から出て1階へと降りた。
外に出ようとした時、後ろからおばちゃんが声をかけてきた。
「あ、ちょっと待って」
「はい? 何か?」
「どこかに出かける気かい?」
「そうですけど」
「なら部屋に置いてある私物は全部持っていってくれないかしら」
あ、そっか。部屋にはリュックサックを置きっぱなしにしてるんだった。いちいち持っていくのも重いし、面倒なんだよな。
「それとも、もう1泊していくかい?」
う~ん、どうしよう。また宿屋を探すのも面倒だし、当分はここで寝泊りするのもありだな。
どうせ家を買うのはまだ先なんだし、今はここを拠点にするか。
「じゃあもう1日泊まります」
「わかったわ」
宿代をおばちゃんに渡した後、外に出ることにした。
町中には多くの人が行き来しているがよく観察してみると、リーズのような動物の耳が生えている人がちらほら見かけた。中には帽子を被っている人もいたけど、尻尾が生えていたのですぐに獣人だと分かった。
なるほど。初めてこの王都を訪れた時は店や家ばかり見ていたけど、こうして観察してみると確かに獣人も紛れているな。
ま、こんな光景もすぐに慣れるだろう。とりあえず今は家を買うことを優先しないとな。
不動産らしき店を発見しそこで購入する家を検討した結果、色々なことが分かった。
家の値段は幅が広く、金貨1枚以下で買える家もあれば金貨100枚を超えるのもあった。
探せばもっと安い物件も見つけることができたけど、そういったのは大抵『訳あり』だったりいわくつきの物件だろう。さすがに事故物件はゴメンだ。
俺が欲しい家は普通の一軒家だ。あまり広いと掃除が大変だし、そんなに多く物を置かないつもりだから必要ない。大体1LDKくらいの大きさかな?
これらを総合して考えた結果、欲しい家の価格は約『金貨50枚』という結論になった。新築で立地条件がいい家となるとこのくらいはするだろう。もちろんある程度は前後するだろうけど、今はこれを目標にして稼ぐ事にする。
さて目標は決まったし、次に考えるのは稼ぎ方だ。これについてはアテはある。
この王都にはいくつかの区画に分かれているようだ。その中で商売が出来るエリアがいくつかあるが、大きく分けて2通りある。
1つ目は店が立ち並ぶ『商業エリア』だ。これは自分で店を持っている人が商売する場所で、基本的にはこっちで買い物をすることが多いそうだ。
2つ目は広い場所で誰でも商売できる『露店エリア』。これは店を持たない人が商売できるように設けられた場所ということだ。要するにフリーマーケットというわけだ。俺はこの場所で商売する予定だ。
最初は昨日行った質屋に行って稼ごうと思ったんだけど、ああいうのは何度も頼るべきじゃないと感じた。そもそも個人でやっている質屋で金貨50枚分も買い取ってくれるとは思えないしな。
質屋のレオボルトが言ってたこと思い出し、貴族相手に商売するということも考えたがこれは無しだ。
なぜなら貴族などの富豪層相手に売ろうとしてもコネが無いからまず会えないからだ。行ったところで門前払いされるのがオチだ。
それ以外にも理由がある。それはレオボルトみたいな目利きが貴族側にも存在しないとも限らないからだ。
あの人の存在は本当に予想外だった。貴族ぐらい金持ちだとあの手の鑑定眼を持った人を雇っていそうだからな。そこに下手に変な物を売りつけたら何されるか分かったもんじゃない。
だから地道に商売することに決めたわけだ。
どうせ時間はある。焦らずともゆっくり稼いでいけばいい。
家を買ったら快適なニート生活が待っているんだ。そう思えばこれくらいの苦労はどうってことはない。
考えはまとまった。これで目標は決まったし、後は実行するだけだ。
「さてと、そろそろ戻るか」
さっそく宿屋に戻って商売の準備をしなくては。
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