第10話:キャンプで食べる飯はなぜおいしく感じるのか
約10分ほど歩き続け、良さそうな場所を探してそこで釣りをすることになった。
さっきの場所と比べて周囲に木々が多く、大きな岩も目立つようになってきた。ここなら岩陰とかに魚がいるかもしれない。
さっそく針に餌をつけてから投げ入れた。
「さーて、釣れるかなー?」
「釣れるといいですね~」
待つこと1分。
ググッっと引っ張られる手応えを感じ、すぐに竿を引いた。
「おっしゃ! かかった!」
「も、もうですか!?」
ゆっくりとリールを巻き、引き寄せていく。
「け、けっこう大物かもしれん!」
「が、がんばってー!」
徐々に岸まで近づき、水面に暴れる魚の姿が見え始めた。
「あっ、やべっ。網忘れた!」
急いでカタログからタモ網を購入。
そして網を伸ばして魚を中に入れた。
「…………よっと!」
「や、やりましたね!」
連れた魚はヤマメみたいな見た目をしている。これは塩焼きにしたら美味しそうだ。
「サイズは……20センチぐらいか」
「いい大きさじゃないですか」
「だな。これは後で食おうぜ」
「はい!」
やっぱり釣れるじゃないか。場所が悪かったんだな。
まだ一匹目だけど、釣れると楽しいもんだ。
「そうだ。カミラちゃんもやってみる?」
「ええっ? いいんですか?」
「この竿貸すからさ、自分でやってみなよ。楽しいよ」
「は、はい」
さっきから興味津々な感じで目を輝かしてたからな。やはり自分でもやってみたかったんだろう。
釣り方を簡単に説明し、カミラ1人で釣りをすることになった。
「えいっ」
「そうそう。いい感じ」
仕掛けを投げ入れてから竿をしっかり握っている。なかなか微笑ましい光景だ。
竿もそこまで大きくないタイプを購入したので、子供でも十分扱えるようだ。
「わわっ……引いてますよ!」
「おっ、もうアタリがきたか。思いっきり竿を引くんだ!」
「はいぃぃぃ!」
竿を動かし引き寄せようとするが――
「きゃあ!」
「――おっと!」
危ない危ない。
あまりにも引きが強かったのか倒れそうなり、間一髪のところで支える。
そのまま俺もカミラの後ろから竿を持つことに。
「うおっ! 重てぇ!? こりゃ大物かもな!」
「ご、ごめんなさい。支えきれなくて」
「気にしなくていいって。さすがにこれは1人じゃ辛いだろうし」
さすがにこれは子供1人だと辛い。それほど魚が暴れているのだ。
「カミラちゃん! しっかり竿を握るんだ! 足元にも気をつけてね!」
「わ、わかりました!」
慎重にリールを巻き、泳いでる魚の動きに合わせて竿を左右に振る。
そしてしばらく暴れる魚と格闘し続け――
「もうちょい……! あと少し……!」
タモ網を伸ばし、無事捕獲に成功することができた。
「つかでっけぇな! なんじゃこりゃ!?」
「こ、こんな大きいお魚初めて見ました!」
サイズは30センチ……いや、40センチを超えているな。かなりの大物だ。
「もしかしたらこの川の主かもな!」
「かもしれませんね~」
「やったじゃん! カミラちゃんがこれを釣ったんだぜ。すげぇよ!」
「私が……これを……」
自分が釣ったのに未だに信じられない様子。まぁ気持ちはわかる。こんな大物は初めて見たらしいからな。
「どうだ? 来てよかっただろ?」
「…………」
「カミラちゃん?」
あれ? 聞こえてない?
「おーい?」
「……す」
「す?」
「――すっっっっっごっく楽しいです!!」
「だろ?」
いい笑顔だ。やはり子供はこうじゃなくっちゃ。
「おし、もっと釣ってみようぜ。まだまだ未知の魚がいるかもしれないしな」
「はい!!」
その後も順調に釣れつづけ、なんと10匹以上も捕ることができた。もしかしたらここは穴場だったのかもしれない。
小さい魚は全てリリースすることにして、7匹を持って帰ることになった。
「そうだ。釣った魚をここで食ってみない?」
「いいですね! 実は少しお腹がすいてきたところなんです」
「俺もなんだよな」
さっそく網に入れた魚を取り出そうとするが……
「あっ」
「ん? どうした?」
「ごめんなさい。包丁持ってくるのを忘れてました……」
「ああ、そういうことか」
カタログから包丁を購入し、カミラに渡した。
「ほら。これでいい?」
「本当に何でもあるんですね……」
「ま、まぁね」
「では使わせて頂きますね」
あれ? というかカミラがやるの?
「カミラちゃんは魚
「まかせてください。けっこう得意なんですよ」
包丁を手に持ち、魚を綺麗に調理している。おお。見事なもんだ。
けれどもなんというか、子供が魚を切っていく光景はすごいな。手には魚の血がベッタリついているし、内臓などを慣れた手つきで取っている。
「そういえばどうやって食べるです?」
「んーそうだな……やはりここはシンプルに丸焼きでいこう」
「わかりました」
釣った魚の丸焼きをかぶりつくのって、一度やってみたかったんだよな。
さてと、俺は火の準備するかな。
七輪と炭を買って焼いてみるか。そう思ってカタログを呼び出したところで――手が止まる。
いや待てよ。ここは普通に薪から火をつけるか。原始的な方法で焼くのもまた一興だ。
「準備できましたよー」
「ごめんちょっと待って、薪拾ってくるよ」
「あ、お願いします」
周辺から乾いてる枝と枯れ葉を広い集めてから戻り、焼きやすいように適当に置いていく。そしてライターで枯れ葉に火を付け、息を吹きかけながら次第に火を大きくしていく。
よし、こんなもんか。あとは火が安定するように様子を見ながら枝を継ぎ足すだけだ。
魚は串を使って串焼きにしよう。塩を多めに振り、火の近くの地面に突き刺した。
あとは焼けるまで待つだけだ。
待つこと約15分。いい感じに焼けたので食べることにしよう。
「よし、さっそく食おうぜ」
「頂きますね」
串を持って魚の胴体を豪快にかじる。
…………
「……うん。いけるぞこれ」
「はい。美味しいです!」
ちょっとしょっぱいのがまたいい。やはり串焼きはこうでなくっちゃ。
自分で取った食材をその場で食べるのは格別に美味く感じるな。こういうのはカタログで購入したやつでは味わえない感覚だ。
偶にはこういうのも悪くないな。自然に囲まれながら食べるメシはどうしてこんなにも美味しいんだろう。キャンプが好きな人の気持ちが分かる気がする。
あっという間に完食。
「ふぅ。美味かった」
「こういう食べ方もいいものですね」
「だろ?」
やはり普段は串焼きとかしないんだろうな。
「んじゃ、そろそろ帰るか」
「あっ、残りのお魚はどうしましょう……」
「おっとそうか。任せて」
カタログからクーラーボックスを購入。そこに残りの魚を全部入れた。
どうやら全部血抜き済みらしい。これなら傷みにくい。
火もしっかり消し終わり、帰ろうとした時だった。
「……ん? 何かいるのか?」
木々がガサガサと動く音が聞こえてきたのだ。
まるで何者かが森の中を走ってるかのような……
「ま、まさか……」
「カミラちゃん?」
なぜか青ざめている。もしかしてこの正体を知ってるのか?
正体不明の音は徐々に近づいてくる。
そして――
草むらから一匹の狼が姿を現した。
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