第9話:新たな能力

 食事が終わった後、カタログを出して色々と調べていた。他に隠された機能が無いか知るためだ。

 もしかしたらまだ便利な仕様があるかもしないからな。




 やっぱりあった!

 あれこれ試している内に、他にも知らなかった仕様があることを発見した。

 それは『ゴミ回収機能』だ。


 どういう仕様かというと、要らなくなった物をカタログが吸収して破棄してくれるというものだ。

 やり方は簡単。カタログを出現させた状態で物を近づけるだけだ。そうすると物がカタログに吸い込まれるように消えて無くなるのだ。環境にも優しいシステムのようだ。


 だけど一度カタログに吸収された物は二度と取り出せないようだ。その事に気づいたのは、購入したばかりのカセットコンロやら鍋やらを吸収させた後のことだった。

 だから『ゴミ回収機能』とよんだのだ。

 欲を言えば四次元ポ○ットみたいに、色々収納できて自由に取り出せるような仕様がよかったんだけどな。でもまぁこれはこれで便利だ。間違って捨ててしまったとしても買い直せばいいだけのことだしな。


 そんな事を考えていると、カミラが色々と準備し始めていることに気付いた。


「どうしたの? さっきから動き回ってるけど」

「これから川に洗濯しに行くんですよ。しばらくかかるのでヤシロさんはゆっくりしてください」

「あーなるほど」


 木のバケツと、衣類と持っていこうとしてたのは洗濯しにいくためだったのか。

 ふーむ。ここに居ても暇だし、俺も行ってみようかな。


「俺も付いていっていい?」

「いいですけど……洗濯するだけですよ?」

「どんな感じなのか興味あってさ」

「特に変わったことはないと思いますけど……」

「それにここに居ても暇だし、ちょっと散歩もしたいんだよ」

「そういうことでしたか」

「んじゃ行こうか」


 一緒に家を出て川へと向かうことにした。

 そういやカミラはバケツを持っているのは何故なんだろう。川へ向かう途中で聞いてみることにした。


「その入れ物ってなんで持っていくの?」

「これはですね、川の水を汲んでから持って帰ろうと思ったんですよ」

「水を? わざわざ川から持ってきてるの?」

「はい。最初は大変でしたけどもう慣れました」


 いやいや。今でも大変だろうに。

 こんな子供がバケツの水を運ぶのは相当な重労働なはずだ。けどこれもこの世界では当たり前のことなんだろうな。

 ふーむ……


 家から出て約15分後、目的地の川が見えてきた。


「ここでしばらく洗濯していますね」

「あいよ」


 カミラはすぐに川岸に座り、衣類を洗い始めた。かなり手馴れているようで、随分と手際がいい。


 しかしここは本当にいい所だ。自然豊かだし、川の水も飲めそうなほど綺麗だ。

 こういう所で住むのも悪くない気がしてきた。というか俺はホームレス状態なんだよな……

 そういやこの世界のどこに住むか考えてなかったな。いつまでもカミラの家に世話になるわけにもいかないしな。

 う~ん…………まぁいいや。そういうのは後で考えよう。どうせ9日後には馬車が来て町に行くんだ。

 よし、今はとりあえずこの状況を堪能しよう。


 それなり大きい川だったので、釣りをすることにした。このくらい広ければ魚の一匹ぐらいいるはずだ。

 カタログを呼び出し、釣り道具セットを購入した。釣り竿、リール、糸、針などが全てセットで五千円程度で買えた。

 おっと、エサも買わないとな。んーと……面倒だから練り餌でいっか。


 懐かしいなぁ。釣りとか小学生以来だ。中学以降は興味も薄れて次第にやらなくなっていったんだよなー。


 よし、準備完了。

 針に練り餌を付け、川に投げ込んだ。


「さて釣れるかな?」


 竿を持ってしばらく待ってみるが……


「…………釣れないな」


 う~ん。今は魚がいないのか? それとも俺のやり方が悪かったのか?

 リールを巻いて引き寄せ、餌を付け直してから再び投げ入れてから待ってみるが、結局釣れなかった。

 やっぱりここには魚がいないのかなぁ?


「あの……どうしました? 釣りをしているみたいですけど」

「カミラちゃん……」


 いつの間にかカミラが近くまで寄っていた。集中してて気付かなかった。


「いやね、さっきからボウズで悩んでたんだよ」

「坊主? ヤシロさんは坊主じゃないと思うんですけど……」

「あー……そっちと勘違いしちゃったか……」

「???」


 俺が言った『ボウズ』とは釣り用語のことだ。けどカミラは髪型のことだと勘違いしているらしいな。

 ボウズが釣り用語だということを説明することにした。


「なるほど~。釣れない時にそう言うんですね。てっきり髪で悩んでたと思ってました……」

「ははは」


 頬を少し赤らめる姿がちょっぴり可愛らしい。


「ところでこの川って魚は居るの? さっきから餌も食いつかないんだよな」

「居るはずですよ。お魚はこの川から取ってますし」

「ふーむ」


 昨日そんなこと言ってたな。ということは俺の仕掛けが悪いのか?


「でも取れない日は全然取れないって村の人たちも言ってましたよ」

「ほほう。んじゃ運が悪いだけなのか?」

「かもしれませんね」


 まぁプロでも釣れない時は釣れないらしいからな。

 けどまだ諦めたくないな。せっかく釣りセットを買ったんだから一匹でも釣ってみたい。

 …………そうだ!


「ねぇねぇ。川の上流に行ってみない? もしかしたら魚もそっちに移動してるかもしれないし」

「上流ですか……まだ行ったこと無いんですけど……」

「えっ? そうなの?」

「はい……」


 ふーん? 

 ずっと川に近い村に住んでるから、てっきりこの辺りの地理は把握してるかと思ったんだけどな。


「なら行ってみようよ! 大物が釣れるかもしれないし」

「で、でも……洗濯物が……」

「ああ、まだ途中だった?」

「いえ、もう全部終わりましたけど」


 へぇ。慣れてるだけあってさすがに早いなぁ。


「ならひとまずここらに置いといて、あとで取りにくればいいよ。どうせこんな場所まで盗みにくる奴なんて居ないだろうし」

「う、う~ん……」

「心配? なら俺1人で行ってくるよ。それともカミラちゃんは先に帰ってる? 道は覚えたからもう大丈夫だし」

「……いえ、私も一緒に行きます。たぶん平気でしょうし」

「んじゃさっそく行こうか」


 というわけで、川沿いを歩いて上流へと向かうことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る