第3話:カミラとの出会い
しばらく歩き続けること数十分、未だに人と出会えないでいる。
踏みなれた土の一本道をずーっと辿っていけば、いつか誰かと遭遇するかと思ったんだけどな。しかし人らしき姿が見えない。
これは相当な田舎に飛ばされてしまったのかもしれない。このまま誰にも会えないままだと野宿する羽目になる。さすがにそれはカンベンしてほしい。なぜ死んで異世界に飛ばされたのに野宿しなきゃならんのだ。
『カタログ』から購入したハンバーガーを食べながらそんな事を考えていた。メロンパンは既に胃の中だ。けどそれだけだと物足りないので追加で買ったやつだ。片手で持って歩きながら食べられるものといったらこれくらいしか思いつかなかった。
しかし本当に困った。マジで野宿するしかないのか?
野宿するにはテントやら寝袋やら一式を購入する必要がある。けどそういうのは意外と高額なんだよな。
安くても1万ぐらい、高い物だと5万を超える物もある。安すぎると寝心地が悪かったり、気密性に問題があったりするんだよな。
予算が10万しかないのにこんなところで無駄遣いしたくない。
う~む……どうするかな……
とりあえず歩き続けよう。野宿するかどうかは日が落ち始めたら決めればいい。幸い今はまだ太陽がほぼ真上にある。
あと数時間ぐらいは余裕があるはずだ。
さらに歩き続けて数十分後。
「……あっ」
見つけた! やっと見つけた! 遠くに人がいる!
よかった。やっぱり他に人が居たんだ。
徐々に歩くスピードが速くなり、近づく頃には走っていた。
「おーい! そこの君!」
「……え?」
俺の声に反応したのか、こちらを向いた。
その人は可愛らしい少女だった。小学生ぐらいの年齢に見える。
金髪で肩まで伸びたセミロング。やや薄汚れた上着と長ズボンを着ている。まるで農業をしていたかのような格好だ。
目の前にまで接近して止まり、少し息を調えてから話しかけた。
「いやーよかった。やっと他人に出会えたよ!」
「えっと……あの……」
「1時間ぐらい歩いたのに全然人の気配がしなかったからさ、少し不安になってきたところだったんだよ」
「え……? その……」
「周り見ても人工物は1つもなくてさ、どんだけ田舎なんだよって思ったよ」
「あの……」
「あーよかった。これで野宿しなくて済んだよ。せっかく違う世界に来たのにいきなり野宿とかカンベンしてほしかったしな」
「あの!!」
「ん? どうしたの?」
「貴方……誰ですか?」
あ、やべ。名乗ってなかった。
嬉しさのあまり一方的に話してしまった。
「あーごめんごめん。俺は
「わ、私はカミラと言います」
「カミラちゃんね。ちょっと聞きたいんだけど、近くの町ってどこ行けば辿り着けるか分かる?」
「町……というと、〝王都ルーアラス〟のことですか?」
王都……? ルーアラス?
聞いたことも無い場所だ。異世界だから当然か。
「あーうん、そこに行きたいんだけど、道とか分かる?」
「えっと……」
「……?」
なぜか言いづらそうに言葉につまるカミラ。
「ルーアラスへ行く馬車は、10日後じゃないと来ないんですが……」
「……へ? マジで?」
「はい……」
10日後か……
それなら歩いて行ったほうがいいんじゃないか?
「しょうがない。だったら歩いていくかな。ちなみにルーアラスまではどれぐらいかかる?」
「馬車でも3日かかりますけど……」
「マジかよ……」
馬車で3日かかるってことは、結局徒歩で行くにも途中で野宿確定じゃないか。しかも3日も歩く羽目になる。だったら馬車がくるまで待ったほうがいいかもな。
いやでもなぁ……
「う~ん……」
「あの……」
「ん?」
「もしよろしかったら、私の村に来ませんか?」
「……え? いいのか?」
「はい。ルーアラス行きの馬車も、いつも村に来るんですよ」
「ほほう。そういうことか」
これはありがたい。そういうことなら馬車がくるまで世話になるか。
「なら村まで案内してもらっていいかな?」
「いいですよ。こっちです」
カミラが歩き出したので、俺もその後についていくことにした。
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