トレッセル村編

第2話:能力確認

 目が覚めた時、視界に入ってきたのは大空だった。どうやら仰向けで寝ていたらしい。

 ゆっくりと体を起こし、辺りを見回す。


「どこだよここ……」


 辺り一帯は大自然だった。木々が生い茂り、人工物が1つも見当たらない。


 なるほど。ここが異世界ってやつか。

 けれども周囲を見ても異世界って雰囲気がしない。どっかの田舎といった感じだ。


「本当にここが異世界なのか?」


 もしかしてあの自称女神のこと含めて全部夢だったんじゃないか?

 けれどもトラックに撥ねられる瞬間を思い出してしまい、その可能性を否定することにした。

 やはり俺は転生して異世界に来てしまったんだろう。


 とりあえず移動しよう。そう思って体を起こそうとした時に気付く。


「縮んでる……?」


 体が少し縮んでいる気がする。起き上がって立ってみたけど、やはり少しだけ背が低くなってる気がする。

 これは一体……?


 あ、分かった。たぶん若返っているんだ。そのせいで背が少し低くなっているんだろう。

 どうやら今は12~15歳ぐらいの見た目になっていると思う。これはあの女神の仕業か?

 まぁいいや。若返ったらならそれはそれで便利だしな。


 ……そうだ。そういや能力がどうのこうの言ってたな。

 たしか本みたいなのを取り出してたな。でも本らしき物はどこにもない。

 あいつが持ってた本はどこにあるんだ?


 いや、もしかして具現化させるとか? 魔法みたいなもんとか言ってたしな。


 試しに手を平にかざし、意識を集中してみることにした。

 すると――


「うおっ!?」


 いきなりポンッと本が出現したのだ。

 目の前に大きな本が閉じられた状態で浮いている。サイズも大きく、人を殴り殺せそうなほど分厚い。


 本の取り出し方は分かった。

 しかし……


「どうやって使えばいいんだ?」


 本を開こうしても全然びくともしない。これじゃあただの鈍器じゃないか!

 まさか騙された……?

 いやいや、そんなまさか……


 考え事をしていると、ぐぅ~っと腹の音が鳴った。

 そういや最近ロクなもの食ってなかったな。なんか食い物とか無いかな。

 でもこの場には食べる物は何も無い。困ったな。


 そんな時だった。


「!? 本が勝手に……」


 突然本が開いたのだ。今まで開く気配すらしなかったのに……

 中を見てみると、様々な食品が載っていた。ラーメン、チャーハン、寿司、焼き肉、焼き鳥……どれも俺の好物ばかりだ。

 これはまさか……!


「パンとかあるかな?」


 するとページがめくられ、次のページには色々な種類のパンが載っていた。


 ……なるほどな。

 つまりこの本は欲しい物を念じると、それに近い物が検索されて表示する仕組みということか。グー○ルみたいなもんか。

 しかし気になる点がある。それは品物の下に数字が表示されているのだ。


 ■メロンパン

  100


 こんな感じに。

 この数字はなんだろう?

 それとは別に右上にも数字が表示されていることに気付く。そこには『100,000』と表示されいる。

 これらは一体何を表しているんだろう……?


 …………


 あっ。分かった!

 商品に下の数字は金額に違いない。そして右上の数字は現在の所持金ってわけか。

 試しにメロンパンを選んでみることにする。

 すると――


「……やはり!」


 本からメロンパンが出現した。それと同時に右上の数字は『99,900』に減っていた。


 これで確信した。

 つまりこの本は通販のカタログみたいなもんだ。その中から商品を選べばすぐに手に入る……というものなんだろう。ア○ゾンで注文するより早く手に入るな。


 ふーむ。これはなかなか便利な能力だ。

 これからはこの能力のことを『カタログ』とよぶことにする。

 再び念じるとカタログは消えてなくなった。取り出し自由ってわけか。


 確かにこの能力は使えるな。いつでも地球の品物が手に入るし、これなら働く必要も無い。というかずっと引き篭もっていられる。

 まさにニートになるための能力じゃないか!


 ……と思ったけど制約がきついな。なぜなら上限があるからだ。

 カタログに表示されている所持金は約10万円しかないしな。10万以内でやりくりをする必要がある。


 まぁでも……


「なんとかなるかな」


 この場に留まってても仕方ない。

 手に入れたメロンパンを食べながら歩き出す事にした。

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