第11話 人生二度目のレベルアップ
マゼンタから教わった魔法は杖からエネルギー波のような物を何キロも先に飛ばした。
一体どれくらいの距離までとんだのか分からないが巨大爆発を起こした事は事実であり大事にならなければいいのだが。
一方のマゼンタも俺の発動した全ての破滅ゴッドブレストの影響により服が吸い取られ上半身はシャツ一枚である。
偉く冷静なので忘れかけていたが、これも大事にならないで欲しい理由の一つである。
「はあ……こんだけ威力があるなら最初から言っとけよな……Lvレベル、レベレベレベレベレベレべレベレベレベレベレレベレベ、ってうるせえ! レベレベレベレ」
耳から聞こえてくるのは大量の『レベ』である。
これってもしや何かを倒してしまったせいで発動している報告音なのではないだろうか。
つまりは本当にこの先にあると言われる魔界にぶち当てたせいで大量のモンスターを殺したんじゃないか。
でもここから20kmもあるんだぞ……。
「なあマゼンタ、レベレベレベレベ……もしかしてなんだけど、レベレベレベレベレ……この魔法で魔界にまで、レベレベレベレベレベ……ぶち当てたんじゃないか、レベレベレベレべ」
「てへぺろ~嘘ついちゃった、本当は魔界の場所は10km先にあるんだよね~」
「っな!? お前な……、レベレベレベレベ」
ていう事は俺は罪もない人間、いや人間ではないがモンスターを殺した事になるのか。
確かにゲームの世界では何も気にせず殺してはいたものの、俺がいざこの手で殺したものだとすると相当罪が重いような気がする。
でも魔界というとゲームなんかでは悪者達の集まりだったりするが、この世界でも虐殺を繰り返す極悪外道だったりするんじゃ。
ていう事は俺がやった事はとても善良な事ではなのか……。
「ていうか何でお前はそうやって嘘までついて俺にこの場で魔法を撃たせたんだ?レベレベレベレベ」
「そんなの決まってるだろ、魔界が嫌いだからじゃないか」
「嫌い?レベレベレベレベ」
「そうさ、僕のお父さんもお母さんもこの国では名高い魔法使いだったからね、でも僕の村はある日魔王ぺリゴールの手によって破壊された、奇跡的に僕は赤ん坊だったから父さんの魔法のベールで守られていたんだけどね、その後生き残っていたのは僕一人、この国の現王様ハッサム様がいなければ故郷は今でも地獄のままだっただろうね……」
「そうかお前にそんな辛い過去があったのか、気の毒に、レベレベレベレベレベ」
この報告音の音でせっかくの感動も台無しである。
何とか通知オフにできないものか、間違って入ったネットの雑談グループくらいに既読の溜まりそうな騒音である。
彼女は俺の耳元で通知が鳴っているなんて事は知らず、目には涙を浮かべている。
「ああ、でも今父さんと母さんの仇討ちができたんだね、ありがとう番丁」
「く、くっつくなよ、それにまだその魔王っちゅうもんに当たったのか分かんねえんだろ、レベレベレベレベ」
「別にいいさ、そいつらが従えている部下共も虐殺を繰り返す悪い奴らだからね、人間じゃ普通はまず倒せないよ」
「人間ってこの世界じゃ劣等種にあたるんだな、それはそうとそろそろ戻ろうか、龍花とテトラ置いたままだし、レベレベレベLvレベルがUPしました」
止まった……。一体何回俺の耳元でこの報告音が鳴り続けたのだろうか。
相当な強敵と思えるモンスターを倒したのだろう。
恐らく本当にその魔王という奴を殺っちまったんじゃないか、だとしたら後々報復しに来たりしないだろうか。と、とにかく今はステータスを確認しておこう。
「ステータスオープン!」
今度は慌てずしっかりいう事ができた、まず注目するのはLvだが……。
吉木番丁(16)Lv618
体力 700
攻撃力 100
耐久力 100
魔力 3000
敏捷性 100
運 1000
威圧 100
ユニークスキル ステータス振り分け
?????
?????
?????
618か……、確か龍花を仲間にした後はLv134だった筈だ。
本当にこんなにLvがサクサクと上がっていいのだろうか、こんなにちょろくていいのか異世界。
「す……凄い、僕が数年かけて知恵を絞った故のLvをこうもあっさり抜かれるなんてね……君には驚かされてばっかりだよ」
「そ、そう? しかし悩むのはやっぱりステータス振り分けだが」
「それなら第二ステータスに振り分ければいいよ」
「第二ステータス?」
ステータスを凝視すると確かに妙なアイコンが表示されていた、『→』というもう一ページありますよ的な感じのアイコンに触れてみる。
触れてみた処、出てきたのはまたしても事細かに書かれたステータスだった。
MP 1000/3000
腕力 100
魔攻 100
魔防 100
器用 100
最初に100が振られているのは長瀬咲のおかげだろう、本当はもっとボロボロだったんだろうな。
「第一ステータスは基礎能力で第二ステータスは専門ステータスなんだ、君はまだ何の職業にも就いていないから第二ステータスの種類は少ないけど、魔法はわざわざ職業に就かなくても粗方呪文が使えるから人気な職業ではあるんだよね」
マゼンタがそう語った後、いつもの光景である吸って吐いてを繰り返す。
「次元の狭間に沈む扉よ・我が盟約に従いその身を現せ! 魔の鍵扉エンター!」
やはり詠唱である、しかし物を取り出すだけの魔法ならわざわざ長ったらしい文面を言う必要も無いと思うのだが、それを言えば杖を取り上げられそうなのでやめておこう。
彼女は次元の扉から本を取り出した、よく見る国語辞典なんかよりも2倍は大きい分厚い本だ。
「これは君にプレゼントするよ、この世界の10分の1の魔法が書かれてある魔術書だ、ステータスポイントは器用だけ120にして他は魔攻と魔防を上げる事をお勧めするよ」
「本当にそれだけでいいのか……お前のアドバイス偏りすぎてあんま信用できないぞ、だけど魔攻は目一杯あげておくか、後は満遍なくあげておこう」
ステータスを一通り上げた処で覚えた基礎魔法をマゼンタにその場で指導してもらう事にした。
呪文名だけでいいものをマゼンタは一々詠唱まで覚えさせようとするせいで面倒臭かったが、全ての破滅ゴッドブレスト以外の技も覚えたおかげで普通の敵とは粗方戦えるような気がした。
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