第6話 異世界料理

吉木番丁(16)Lv134


体力 683


攻撃力 3


耐久力 7


魔力 2012


敏捷性 13


運 20


威圧 90000000




ユニークスキル ステータス振り分け


        ?????


        ?????


        ?????









 テトラが近くで見つけたこのお店は宿屋込みの料理屋であった。


料理のメニューをざっと見たがどれもこれも異世界用語ばかりでちんぷんかんぷんだったのをテトラに教えてもらい、生前でも食べていたもののみを注文する事にした。


 まず最初にテーブルに置かれたのはフランスパンのように長く硬そうなパンだった。


 ただしこのまま普通に食べても決して美味いと言える代物ではないだろう、それと一緒に店員が置いていったのはガーリックオイルだ。どうやらこれをつけて食べるようだが、口に運んでいった際に咥えていた物は親指と人差し指のみだった、パンの姿は無く歯の勢いは止められずに指をざっくり……。




「あいったーーーー!!!!!」




 どうやらパンの行方は探すまでもなくマゼンタが手に取り、パクパク咥えながらエールをグビグビと飲んでいた。




「ひやああ、やっぱにんにくはお酒に合いますな~ひっく」


「マゼンタ……お前酒とにんにくで臭いぞ」


「あー、未成年には分かりませんよ~この気持ちよさがね~僕はこの一杯のためにいきてりゅのだ~」




 なんという屈辱だ……。俺は元々は23歳でお前達より年上なんだぞ、それなのに今は店主の判断でお子様はオレンジジュースのみだと言われ龍花と一緒にオレンジジュースを飲んでいるのである。




「マゼンタ~私にもそれちょうらい~ひっく」


「ははっそれなら今丁度番丁がパンにオイルをつけてる処だよ」


「いや鬼かお前達!」




 渋々ガーリックオイルをつけたパンをテトラに渡す、奢ってくれるのは彼女なのだから止むを得まい。


ようやく口に入れる事ができたのはその後である、美味しかった、美味しかったのだが……この酔っ払い二人に付き合わされるのは骨が折れる。




「龍花、お前はあんな大人になっちゃ駄目だぞ」


「番丁がそういうのならならない……」


「いい子だ」




 次にテーブルに運ばれたのはピザだった。


日本で食べるピザは外国人からあまり評判が良くないと聞くが、この世界で食べるピザは直で窯に入れて食べるのでほんのり焦げ目のついた部分はサクサクと砕く事ができ、生地の上にあるチーズはどこまでも伸びていき、海老に関してはオリーブオイルの風味に包まれ、ぷりぷりとした新鮮な赤海老の身が口の中で弾けるような絶品さだった。




「う……うますぎる……これにビールがあれば……」


「駄目駄目! 番丁は未成年なんだから未成年らしく飲めるもん飲んどかなきゃ」


「俺だって本当の年齢はお前らより年上の23なんだからな!」


「へえへえ、そうですか、かわいいでしゅね」




 酔ったマゼンタはさっきよりも断然にうざい、子供扱いするように片手で俺の頭を撫で左手にはごくごくとエールを飲み干していた。




「ぷはあああああ!!! もう駄目……では皆さん~先に寝ます、おやすみなさ~ぐーzzzぐーzzz」


「あらら本当に寝ちゃったわね」


「一生ここで寝かしときゃいいんだよこんな奴」


「番丁……私も眠い……」


「ああ、龍花は寝てていいぞ、俺がベッドまで連れて行ってやるから」


「ほんと……」




 そう言うと龍花も眠りにつくのだった、寝た姿は天使のようだ、さっきまで戦っていた黒龍とはとても思えないような愛らしさがある。




「さて、そろそろ料理も全部食ったしここで泊まっていくんだよな?」


「そうだよ~ていうかもうすっかり夜も暗くなったね、この時間じゃここ以外に空いてる店はないと思うわ」


「じゃあ早速チェックインをしないとな」




 店主を呼んだテトラは会計銀貨10枚を払った、お釣りが返ってこないという事は値段が大雑把に設定されてるって事なんだろうな。




「ところ店主さん、4人泊まりたいんだけど3部屋か2部屋空いてないかしら」


「いやー悪いけど今日はありがたい事に客足が伸びていてね、1部屋しか空いてないんだ」


「ふーん、じゃあ1部屋でいいわ」




 テ、テトラさん? 男の俺の存在忘れていませんか? 相部屋ですよ?




「じゃあ私はマゼンタを部屋に運ぶから龍花ちゃんを運んでもらえるかしら」


「お、おう……」




 いかん……本来ならツッコミを入れなければならないのに俺のあらゆる欲がそれを拒んで、女の子三人と泊まる事を勧めてやがる。


 とりあえずマゼンタと龍花をベッドにへと運んだ、案の定一つしかないベッドだったがとても広く、四人が寝ても決して落ちる事は無いのだが。




「俺は床で寝るよ、こういうのは慣れてるしな……」


「駄目よ風邪ひくわ、四人寝れるスペースがあるんだからベッドで寝なきゃ」


「そだよ~番丁! 床で寝たら風邪引いちゃうぞ~それとも僕達と寝るのが嫌なのか~」


「なんだよマゼンタ、お前起きてたのか」


「ぐーzzzぐーzzz」


「………」




 まだ酔いが収まってないテトラが「番丁くん、もう少し付き合えるかしら」と言ったので、居眠りについたマゼンタと龍花はこの部屋に置いといて、俺とテトラで宿を出て外を出歩く事にした。




「こんな夜中にどこに行くんだ?」


「番丁くんはカジノとかやった事あるの?」


「ああ、ゲームでならな」


「私の収益はほとんど依頼されたクエストで貰ってるわ、でも消費の方は食費だけじゃ足りないからこの町にあるカジノで全部溶かしてるの」


「それ大丈夫なのか、将来の事もあるんだから貯めといた方がいいと思うぞ……」


「だから今日は私の分も稼いでね♪」


「あ、ああ……」




 無邪気な笑みの裏でとんでもない事を期待しているテトラだったが、ただでギャンブルがやれるのならそれに越したことはない、こっちにはゲームで鍛えあげた必勝法があるのだ。




「そういえば話は変わるんだが、異世界から来た奴を探してるとか言ってたよな?」


「そうね、私が探しているのはナガセ・サキよ」


「ナガセ・サキ? なんだその日本人っぽい名前は」


「番丁君と似た中々独特な名前だと思うけど、あなたと似てると思うのはそれだけじゃなくステータスもよ」


「ステータス?」


「あなたの威圧値が異常に高かったように彼女もまた運の値が異常に高いのよ、勿論見た人は誰もいないわ、しかし彼女が出目を狙ったら百発百中、毎回満額を張った時にのみ彼女は負けずにプラスの収益で勝っていくわ、そしてこのドミノカジノでは毎月この日を限定に青天井、誰も過去に張った事がない100金貨まで賭けられるという特別な日なんだわ」




 テトラの目線の先には今までのものとは比べものにならないくらい大きい『DOMINO CASINO』と書かれた建物が立っていたのだった。緊張感の漂う中俺とテトラは二人でその建物の中にへと入っていった。

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