第21話 同盟結束
ソーダライトから見せてもらった御神体は、物すごく高額そうな芸術品だった。
御神体は宝石って聞いていたから、鏡とか石とか天然の水晶とか、そんな感じのものを創造していた。
だけど、この御神体は僕の想像していた物とは、全然違う形だ。
(ねえ、これアイアゲートちゃんに似てない?)
(ああ、そうだ。
あんたも思ったか)
(うん。そっくりだと思う)
一言で言うと、これは宝石の女神像だ。
大きさは1m程の色は黒を基調とした宝石で作られており、黒曜石とかオニキスとか、そういった類の石に見える。
女神像の美しい顔立ちは、アイアゲートちゃんにかなり似ている気がする。
と言うか、瓜二つだよね。
目鼻立ちに身体のスタイルまで一緒だし、これで別人だと言われても信じられないなぁ。
(この紐でぐるぐる巻きにされているのは?)
(……あー、それな。
まあ、不幸な事故が有ったと言うか……。
紐を解くと、真っ二つに割れてまうんだよ)
女神像は紐でぐるぐる巻きにされていた。
あーうん?
あー……確かによく見ると、この女神像、縦に割れ目が入っているね。
それに多分だけど、女神像の背中には、アイアゲートちゃんと同じ3対6枚の翼が有ったんじゃないかなあ?
それが今は無残に壊れており、何か不幸な事故か事件が有ったのを伺わせる。
(たださ、亀甲縛りは無いんじゃないの?)
(俺はこれ以外に、強く縛れる縛り方を知らねーんだよ)
引くわ!
何だそりゃ!
言わずとも、あんたがどんな余暇を送っているのか、理解出来た気がするわ。
(そりゃアイアゲートちゃんも怒るわ……)
(いや待て、あの堕天使が怒ったのは、亀甲縛りが原因じやねぇからなっ!?
他に理由有っての事だからなっ!?)
(理由って何さ?)
(あー、まぁ、何だ……。
えっとだな。
御神体を壊した……事かな?)
何か歯切れの悪いコメントだなぁ。
御神体を壊した……か。
うーん。
良くわからないけど、この女神像はアイアゲートちゃんにとって大切なものだったんだよね?
それが壊されたのなら、普通は怒る。
アイアゲートちゃんが切れてたのも、不思議ではないのかな?
(で、どうだ?
目的は話したぜ?
力を貸してくれるのか?)
僕の直近の目標は、堕天使細胞を取り戻す事だ。
だけどそれには、ガルーダの炎を掻い潜って、旧母体が寄生しているヤカラな冒険者の元まで行かなくてはならない。
ここで課題になるのが、ガルーダとその炎なのだが、それはヤハウェ曰く、ソーダライトが居れば取り戻す事が可能だとのこと。
それ以外に聞いておかないといけないのは、何だろう?
ヤハウェ何かある?
《今後、女神像をどうするのか、聞いて下さい》
(ねえソーダライト。
この御神体、どうするつもりなの?)
(……依頼では持って帰る様に言われていたが、持って帰るつもりは……無い。
俺達はこれ以上、堕天使アイアゲートの怒りを買いたくねえ)
(御神体はここに置いていくってこと?)
(そうだな……。
出来る事なら早々に元の場所に戻して、破損箇所を修復したいと思っている)
なるほどね。
ソーダライトの目的は分かった。
御神体を元の場所に戻し、修復したいという気持ちもわかった。
ソーダライトは御神体が壊れた事を「不幸な事故」と言っていたし、故意で壊してないなら、情状酌量の余地は有りそうな気がする。
(いいよ)
(あん……?)
(だから、アイアゲートちゃんの説得、手伝ってあげるって言ってるの)
(お、おおっ!?
ま、マジかっ!?
す、すまねぇ!! 助かるっ!!)
僕はソーダライトに協力してあげようと決めた。
その理由は、僕は彼に負い目があるからだ。
僕がソーダライトにインフルエンザを発症させなければ、彼はアイアゲートちゃんに命を狙われる事は無かった。
こいつの不幸の始まりが僕に起因しているのに、罪滅ぼしをせずに無視するのは、流石に違う気もするからね。
「ソーダライト。
話はどうなったべ?
オラ、チャネリング出来ねから、どんなやり取りしてるか、わからねえど」
「力を貸して貰える事になった。
あの堕天使に惚れられるかもしれんぜと説得したら、何とかなった。
チョロくて助かったぜ」
(聞こえてるっての。
どーせ僕は単純馬鹿ですよーだ)
(あ、いや、そういう意味では……)
ふんだ。
どうせ僕は馬鹿ですよーだ。
でもその馬鹿に頼らざるを得ない君は、もっと馬鹿ですよーだ。
(き、気に障ったのなら謝る。
す、すまねぇ)
(いいよもう。
御神体を元の場所に戻すんでしょ?
じゃあ、早速その奥宮?
そこに連れてってよ)
(あーいや、それが……な)
(うん?)
(実は、情けない話だが……。
現在、俺は迷子でな……。
御神体が有った場所が何処にあるのか、道がわからねぇんだ)
はああ?
君らって神殿内を調査してたんでしょ?
それなのに何で道に迷っているのさ
(あー、俺って魔法で水の鎧を展開する事が得意なんだが、ガルーダの炎から逃れる為に、これを多用してな)
(さっきの水の鎧?)
(そうだ。ウォーター・アーマーって言うんだがな。
水はインクを流すだろ?
水の鎧で、懐に入れていた地図のインクが、流れちまったんだよ)
ソーダライトが懐から、1枚の羊皮紙を取り出す。
しかしそれには何も描かれておらず、インクで黒く汚れているだけだった。
(ガルーダから逃げる為に、神殿内をかなり走り回ったからな。
地図が無いと現在地もわかんねーし……。
そういう訳で、俺達は今、完全に迷子になっちまってんだよ)
ふーん。なるほどね。
そう言う理由なら、仕方が無いよね。
この人、本当に運が無いなぁ……。
(その奥宮が何処にあるのか、全然わからないの?)
(奥宮の近くには地底湖がある。
特徴がある場所だから、近くまで行けばわかる筈だ)
(地底湖……地底湖かぁ。
それって、まっ黄色の毒々しい地底湖?)
(知っているのか!?)
あーうん。
それってさっき、柄の悪い冒険者達に寄生しようとしていた時に見つけた、あの地底湖だよね?
それなら何とか、道順が分かるかも。
(……案内しようか?)
(た、頼むっ!!)
そうして、僕はソーダライトらを引き連れて、さっき見つけた地底湖へ向かう事になった。
でも、何で彼はわざわざ御神体を、持ち出したんだろうね?
どうせ元有った場所に戻すなら、持ち出さなけりゃ良かったじゃん。
そんな事をソーダライトに伝えたら、神殿の調査で何が有ったのか、話の続きを話してくれる事になった。
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