第16話 インフルエンザと魔法剣士②
「ゴボゴボガバッ!!
はぁ、はぁ、い、行ったか……?」
「そ、そのようだべ……。
ガルーダの奴、オラ達に気付かなかったみたいだど……」
結局ガルーダは僕達に気付かずに、通り過ぎていった。
ただ移動するだけで炎をまき散らしながら飛翔するとか、僕にとっては災害以外の何者でもないじゃない。
上手くやり過ごせて、本当に良かったと思う。
「ガルーダの背中に、あの堕天使は載ってたべか?」
「……いや、居なかった気がするな。
ガルーダの目的は、神殿内に居る俺達の排除……なんだよな?」
「そうだと思うど。
ガルーダはあの堕天使の命令で動いているべ」
「するとあの堕天使は、俺達の討伐を眷属に任せて、高みの見物をしているって訳か……。
くそっ!! 忌々しいぜっ!!」
神殿内に居る俺達の排除……か。
やっぱりアイアゲートちゃんを怒らせたのは、この人達で間違いない様だね。
と言うか、そのとばっちりで、僕まで巻き込まないで欲しい。
理不尽感が凄いんだけど。
「ようビビバ。
つまるところ、あの堕天使アイアゲートって、何者なんだ?」
「はあ!? ソーダライトおめ、奥宮でも似たような事を言ってたべな!?
おめ、本気で知らないべか!?」
「本気で知らねぇんだっての。
元神様で、元々は守護霊の元締めをしていて、物凄え神気を纏ったヤバイ奴ってのは良く理解した。
だが、つまるところ、あいつは何者なんだ?」
「あ、あのなぁ!
あのオナゴ、冒険者指南書にも載っている程の、超有名人じゃないべかっ!!」
そうなん?
アイアゲートちゃんて有名人だったんだ。
やっぱり魔王軍だからかな?
まあ、魔王軍と言えども、あまりあの子が悪い事している様には、見えないんだけれども。
「あのオナゴは魔王軍の最高幹部だど」
「さ、最高幹部だぁ!?」
「だべ。悪名高い魔王軍八分衆の1人であり、金星の象徴として、明けの明星とも言われているど。
おめ本当に知らないべか?」
さ、最高幹部ですか……。
思ったよりも凄い女の子だった。
アイアゲートちゃんは自身の事を、魔王軍所属の堕天使としか称していなかった。
まさかそこまで凄い肩書を持っているとは、思いもよらなかった。
「明けの明星……って、さっき奥宮でも言ってたな」
「だべ。その強さは単体で、天界の軍隊と互角の戦いをすると謳われているど。
ほんにゃ、元々その前身は、天界で祀られていた神の1柱だったって有名だべ」
「神として祀られていた……か。
この神殿に祀られていた神が、そのアイアゲートなんだよなあ……?」
「……それは間違いねえべな。
本人も確かそう言っていたべ?
でねーと、御神体に手を出してあれ程怒るなんて、有り得ねーど」
御神体?
えっと御神体って、神社とかで神の依代とかに使われる鏡とかそんなのだよね?
何故いきなり話の中に御神体が出てくるの?
(……ねえ、君たちさあ。
アイアゲートちゃんに何したの?)
(あ、アイアゲートちゃんだとぉ!?)
(アイアゲートちゃんって誠実っぽそうな子だったし、あんなに激怒するイメージ無いんだよね。
君らアイアゲートちゃんに、何をしたの?)
僕が抱くアイアゲートちゃんのイメージは、優しそうで誠実な女の子って感じだ。
もしこれが辛辣な性格をしていたなら、自分の細胞を他人に与えたり、初対面の人の身の上話を熱心に聞いてくれたりしないもの。
(おい風邪の精霊よ。
テメェ、あの最凶美少女と知り合いなのか?)
(一応ね)
(……仲は良いのか?)
(うーん? どうなんだろう。
嫌われてはいないと思うんだけど)
もしアイアゲートちゃんが僕を嫌っていたら、あんなに優しく接してくれる事は無かったと思う。
でも仲が良いかと問われれば……微妙かな?
僕とあの子は初対面の様なものだし、そもそも仲良くなってもいない気がする。
や、あれだけ可愛い子なんて見た事無いし、こちらとしては是非仲良くしたいところなんだけど。
(なあ、風邪の精霊よ!
お願いがある!)
(えっ!? 何だよ急に!?)
(俺達が生きてリガガラ神殿から生きて出れるよう、堕天使アイアゲートの怒りを収めてくれないかっ!?)
えーと、なに?
怒りを収める?
僕がアイアゲートちゃんの怒りを?
(頼むっ!!
出会ったばかりでこんな事を言うのは、厚かましいと思うが、頼れるのは、あんたしかいねぇんだっ!!)
いや、僕しか頼れる者がいないと言われても、それは無理でしょ。
そもそも僕とアイアゲートちゃんは、ただ顔見知りなだけであって、友達でも何でもないんだよ?
もし僕が手を貸して、君達の仲間と思われて嫌われちゃったら、どうするのさ。
メリットなんて無いよ。
《回答:メリットは有ります。
この人間に手を貸し与える事で、旧母体に残された堕天使細胞を回収出来る可能性があります》
はい?
旧母体に残された堕天使細胞を回収出来る?
何で?
《この者達は一瞬ではありますが、ガルーダの炎に耐える事が出来ました。
ゆえにこの者達と手を組めば、ガルーダの炎の中に残された旧母体を回収する事が可能なのではないでしょうか》
なるほど……。
その手が有ったか……。
確かにこのソーダライトはウォーター・アーマーなる魔法を使い、ガルーダの炎を防ぐ事が可能だ。
……完全には防ぎきれず、体を包み込んでも、水が熱湯になってしまったけど。
(頼む! もし手を貸してくれるなら、何でもする!)
(ほほう。何でもすると)
(あ、いや、俺に出来る事に限られるが……)
ふむ……。
何でもするか。
でもどうしようかなぁ?
創造主の記憶……いや、ヤハウェならどうする?
《ヤハウェ?》
創造主の記憶、君の事だよ。
そろそろ名前を付けないと、呼びにくいでしょ?
僕の世界の創造主はヤハウェって神様だと言う説があるのさ。
だから、創造主の記憶である君を、ヤハウェと呼ぼうかなと。
《承諾。今後私はヤハウェと称します》
うん。そうして欲しい。
で……だ。
ヤハウェならどうする?
このソーダライトって奴のお願いを、受けた方が良いと思う?
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