第10話 人間に寄生しました
発熱でオークを倒した事で、今後の方針を迫られる。
選択肢はオークの死体に留まるのと、新たな宿主を探すのと、二択だ。
これって人化を目指すに、どっちを選ぶのが正解なんだろうね?
《回答:一長一短です》
ほう?
その心は?
《オークの死体に留まる事で、さらなるスキルを取得出来る可能性があります。
他方、新たな宿主に寄生する事で、さらなる突然変異を目指せる可能性があります》
ふむ……。
その二択なら、圧倒的に新たな宿主に寄生する方がお得なのだが、果たしてその言葉通りに捉えて良いのだろうか?
今まで細胞を摂取しても使えないとか言われたりして、糠喜びになる事が多かったからなぁ。
ちょっと慎重になってしまうよ。
(……んで……奴が……だよっ!!)
(こうなった……の所為だっ!!)
うん? 何だ?
外部から何かくぐもった声が聞こえた気がする。
これは……誰かがここに近づいて来ているのか?
(大したモンスターは、いねぇんじゃなかったのかよっ!!)
(あ、あ、あの女は化物だっ!!)
あーいや、これ完全にオークの死体の傍に誰かが居るわぁ。
しかもこれ、人間の声だよね?
って言う事はさっき感じた人の声や足音は、やっぱり気のせいではなかったんだな。
よく聞こえないからわからんけど、この人達は誰かから逃げているように感じる。
誰から逃げているのだろう?
冷静に考えればこの世界や神殿の事など、あんまり詳しく知らないんだよなぁ。
もしかしてこの神殿は、かなり危険な場所なのか?
(は、早く逃げるぞっ!!)
(お、おうっ!!
こんな場所とはさっさとオサラバだっ!!)
うむむ。
どうしようかなぁ。
オークの死体に留まるのか、新たな宿主を探すのか、今決めなければいけない。
いや、ちょっと待てよ?
僕ってウィルスだし、本体は新たな宿主に寄生して、分体をオークの死体に留まらせるって方法も、可能なんじゃないか?
《回答:はい。可能です》
おお!
じゃあ母体は人間に寄生して、分体をオークの死体に留めよう。
今現在、分体の数は1万体だから、とりあえず半分の5千体程を母体と一緒に連れて行けば良いかな?
《承諾。成功をお祈りします》
よし。
そうと決まれば早速動かねば。
浮遊のスキルを使用して、オークの体外に脱出する。
ふう。久々の外だな。
さてさっきの人間は何処に行ったのだろうか。
既に周囲に人影は無く、急いで彼らを追わなければならない。
「ちょ……待って……置いて行かないで……」
耳を済ませてみると、上階から声が聞こえる。
ふむ。右か。
せっかく人間に寄生出来るチャンスなんだ。
逃さないよ?
分体をわらわら引き連れて、声の聞こえる場所に移動する。
オークの体に残した分体には、新たなスキルを習得出来るか、色々試すよう指示を与えておいた。
本当なら分体の方でも増殖しておいて欲しいのだが、増殖は母体でしか出来ないので、こればかりは仕方がない。
「くそっ!!
これ、さっきの地底湖じゃねぇかっ!!」
「な、何だよそれっ!?
元の場所に戻って来たって事かっ!?」
「ふ、ふざけんなっ!!
どうやったら外に逃げられんだよっ!!」
あ、いたいた。
さっきの声の人たちだ。
数人の人影が、大きな地底湖らしき場所で右往左往しているのが見える。
と言うか、神殿内に地底湖とか、凄い場所だなここって。
しかもこの地底湖、綺麗な水なのかなと思いきや、まるで蛍光塗料をぶち撒けた様なまっ黄色の水だ。
どう考えてもこれって猛毒だと思う
鉱水なのかなこれって?
「そ、そうだっ!!
思い出したっ!!
外に出るには、こっちの道を行けば良いんだっ!!」
「くそっ!! 早くここから離れるぞっ!!
こんな場所には1秒とて居たくねぇっ!!」
うーん……?
でもこの人達、何でこんなに焦っているん?
まるでパンドラの箱を開けてしまったが如く、何かに怯えているみたいだ
まさかこの神殿、相当強いモンスターが潜んでいるのか?
「糞糞糞糞っ!!
何で俺がこんな目にっ!!」
「簡単な依頼だと思ったら、全然違うじゃねぇかっ!!」
「殺すっ!! 絶対にギルド長の野郎、殺してやるっ!!
俺達をこんな依頼を紹介して、生きておけると思うなっ!!」
うわぁ……。
柄が悪いなぁ……。
この人達、顔に深い切り傷があったり入れ墨をしていたり、完全にアンダーグラウンドな方々じゃん。
何者なんだろ?
「おい、逃げるぞっ!!」
「お、おうっ!!」
おっと。
このままでは彼らが逃げてしまう。
早く彼らに寄生しないとな。
「ぐ……ゲホッ!? ゴホッ!?
ゲホゴホガホグホッ!?」
「お、おいッ!? いきなり何だっ!?」
「の、喉に何かが絡んで……ゲホゴホガハァッ!!」
寄生完了ぉ〜っ!
よしよし。
これで新しい宿主に寄生する事が出来た。
一時はどうなるかと思ったけど、まあ順調かな?
……順調だよね?
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