第147話 山の近くでは
ソーマがヴィラックを居残らせ、
ミザリーと三人で食事をしている頃――
(ソーマがヴィラックに居残らせるとは……)
バーントは山へと続く
カラパス村に残っているソーマの事が心配であった。
バーントにとってヴィラックとは、
得体の知れない人間であり、またかつて、
ソーマを危険な目に遭わせようとした張本人であるからだ。
バーントはジョンを通じて、
ヴィラックがソーマを襲った元使用人たちを惨殺したことも知っている。
ジョンやミザリーが体の形状に変化が起きたように、
ヴィラックも最初は黒い粒子を体から発し続けていた。
今は制御できているため、表に漏れ出すことはないが。
(おれに……いや、ソーマにしても珍しいが……)
ソーマがヴィラックに対して どのような接し方をしているかは、
バーントに限らず、近くにいるアルテナ達も よくわかっていた。
(いったいソーマに何が起きたんだ? あいつを選んだ理由は? )
そのような疑問が頭に浮かびながら、バーントは周囲を見回した。
広大な、草原とも言えそうな緑に囲まれた山のなだらかな地形に
野性か否か、牛や馬、羊や
(これだけ広いと、魔物が出てきてもおかしくはないが……)
バーントは早々に
ヴィラックがソーマに何か仕出かすんじゃないかと、
心配になっていたのであった。
結局バーント達が村に戻ったのは、もうしばらくしてからであった。
*
「な? 本当に裸みたいな恰好だろ? 」
バーント達より かなり村に近い位置から、
アルテナの恰好を指差した青髪の少年バルトが
後をついてきた二人へ顔を向けて、声を掛けた。
「ほ、本当だ……」
「な、なんであんな恰好してるのよ……」
薄い赤色の髪の少年ラルレも茶髪の少女ピアも、
どちらも顔を赤くし、遠くからアルテナの後ろ姿を見つめていた。
村の中で狩人のヨートルを探していたバルトが、
村へやってきたソーマ達を見かけて後を尾行していた。
村長の家へ連れられていった彼らが
早速 村の外を見てまわりに出ることを、
家の外で聞き耳を立てていたバルトは知った。
村が貸した家に残る者と見てまわる者とで別れたのを
他所の家の陰へ移動し こっそりと見ていたバルトは、
外へ行くアルテナ達を尾行しようとしていたところに
幼馴染であるラルレ と ピアの二人がやってきた。
単独で密かに村を出ようとするバルトを止めようとする二人に、
バルトは
その時そこにいなかったラルレとピアの二人は、
バルトの話を中々信じれずにいたが、二人もバルト同様 多感な年頃であり、
平穏な村の中で退屈さを感じていた二人は興味関心をそそられ、
バルトと一緒に行動し、アルテナ達の存在を確認したのであった。
「けど、山の方じゃ見晴らしが良くて見つかりそうだな。」
「そうだね。」
「私達、勝手に村の外に出ちゃってるし、
大人たちに怒られない内に早く戻りましょ。」
アルテナ達が山の方へと進んでいくのを見送りながら、
バルト達は尾行を断念し、村に戻ることにした。
(村の中には、まだ あの小さい奴とかいるしね。)
バルトはそう思いながら、村へと戻っていった。
(村に戻って……ヨートルには、また今度教わりに行こう。)
バルトの頭の中では、村の住人であるヨートルより、
通日程しか滞在しないであろう彼らへの関心の方が今は高かった。
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