第136話 人として
アルテナは信じられない といった表情で、
一連のソーマの行動を見つめていた。
アルテナも――
(もしかしたら、彼を助けられるのじゃないかしら? )
という希望と、
(寄生されていたら、もう助からない……)
という諦めとを持って 判断に迷った結果、
(どうすればいいの……? )
時間稼ぎという愚策を取ってしまっていたが、
「あんたは!! いつまで操られているつもりだっ!! 」
ソーマが
アルテナは驚かされていた。
ソーマの拳は寄生された男の頬に直撃し、
よろめいた男はそのままソーマに体を掴まれ
互いの位置を入れ替えさせられ、
ソーマの指名を受けたバーントが
(ど、どうなるのかしら……? )
アルテナは、事態の推移を見守ることにした。
*
バーントさんが寄生している
男の体の力が抜けて、体を掴んでいた おれは、
慌てて彼を できるだけゆっくりと地面に寝かせた。
「セイっ!? 」
彼を心配していたキエラさんが駆け寄ってくるのと、
あちこちに逃げていた村人たちが、遠巻きに眺めているのが
おれの視界に入っていた。
セイって言う人を寝かせる時に片膝をついていた おれは、
「ぅ……」
彼の小さな うめき声が聞こえて、
「おれは……キエラ……」
彼の目線が、おれからキエラさんへと移ったのを見た。
アルテナもバーントさんも、
寄ってきたジョンやヴィラックも、
今は黙って様子を見ていたのが見えた。
まだ警戒しているのかもしれないけど……
「セイ……良かった……無事なのね……」
安心したのか、それとも緊張の糸が切れたのか、
キエラさんは
「……いや……おれは……もう、長くねぇよ……」
セイさんは、キエラさんを見上げて かすれた声で、
「セイ……」
「黒いの……」
キエラさんはセイさんを見つめ、
セイさんは、おれを見つめた。
「な、なんですか? 」
話を振られるとは思ってなかったけど、
「へへっ……効いたぜ……あんたの拳……」
笑って差し出した彼の手を、おれは握った。
「腹の中も……背中も……頭の中まで
蜂に食われてた気がするが……ありがと、な……」
そう言われて、おれは言葉に詰まった。
「人間に……人として……死なせてくれて……」
おれは セイさんの言葉に、何も言い返せなかった……
「セイ、嘘よ……あの魔物は、もう倒したでしょう……? 」
「キエラ……おれ……」
握る
今度はキエラさんが彼の手をとった。
「セイ、お願いよ……生きて、愛しているから……」
「……あぁ……おれも……キエラを愛している。
……こんな時でないと、おれは想いを……伝えられないのか……」
「いいの。いいのよ……」
二人は お互いを見つめ合って、
「だから、キエラ……」
「何……? 」
想いを通わせて、
「おれは、幸せだった。だからキエラも、幸せにな……」
セイさんは、それを言うと目を閉じて……
「セイ……? セイ!? ねぇ、目を開けて! 返事してっ!?
セイ……セイぃいいいいぃぃぃぃっっっ!!」
キエラさんは、彼の胸に
声を上げて泣いていた。
空の太陽は高く、地上の悲しみとは無縁に青空には雲が流れていた。
いくつもの足音とともにマルゼダさんやシアンさん、
ミザリーさんに村長と、村長に連れられた冒険者たちが
駆けつけてきていた……
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