第134話 蜂蜜採りのセイ
(あんな……あんなことになるなんて―― !! )
北の森からハニカ村へと急ぎ戻っているキエラは、
その事実を知って 恐れ
キエラは、
蜂の魔物の毒だと思い込んでいた。
村にいる医師が出した薬でも セイは苦しみ続けた。
だから解毒のためにキエラは 彼の家にある
持ち出して、なんとか魔物を討伐しようと考えていた。
魔物を討伐し、その魔物の毒から解毒薬を作れれば、
彼を助け出せるという希望を彼女は持っていたからだった。
しかし、森の中で彼女が見たのは、
悲鳴とともに腹を食い破られて死んだ冒険者たちと、
彼らの腹の中に寄生していた魔物の
冒険者たちが悲惨な末路を遂げたように、
(セイ……お願い……無事でいて―― !! )
そうならないように、キエラは祈りながら戻っていた。
*
前を走る村の女性を追いかけて、
おれ達は村に戻ってきていた。
状況の流れで おれは彼女の鍬を持ったまま、
荷車はマルゼダさんに任せたまま走り続けていた。
マルゼダさんとシアンさんとミザリーさんは、
村長の家へ森の中で起きたことの説明をしに行ってもらい、
アルテナとバーントさんとジョンとヴィラックが
おれと同じように彼女を追いかけていた。
彼女に、魔物に『刺された』人のいるところに
案内してもらうため、だったんだけど――
「――セイ……? 」
一人で森に入ってきていた黄色の長い髪の女性が、
村の中で、青い髪の男性を見て立ち止まった。
この人が、魔物に『刺された』村の人……?
最初に魔物に襲われて、今もずっと家の中で
安静にしているはずの男性が、
目の前の女性が心配していた男性が、
家の外で、こちらを向いて 一人で立ちつくしていた。
「キエラ……どこ、行ってたんだよ……」
「せ、セイ……ご、ごめんなさい……」
うつむいて話す男性に、
キエラと呼ばれた女性が謝っていて――
おれの体は、先ほどのことを思い出して
震えてきていたけど――
「アルテナ……」
「わかってるわ。」
彼の不穏な空気に、おれとアルテナは駆けだした。
「ぎ、きキき キエラああああぁぁぁぁぁっっっ!! 」
「―― ひぃっ!? 」
男の背中から、
四匹の子供たちより大きな緑色の
頭 前足 羽 尾を出し、男と一体化した状態で 彼女に迫った。
「―― 離れろっ!! 」
「っ!? 」
おれは彼女を男から距離を離すように、
化け物になった男に鍬を向け、男が動きを止めたところで、
「たぁっ!! 」
「ごっ!? 」
横手からアルテナは剣を抜かず 男の顔を殴った。
男は殴り飛ばされたものの、背中の蜂が羽ばたいて宙に滞空し、
蜂の大
「うわぁああああぁぁぁ!? 」
「セイが化け物になったぁぁっ!? 」
「は、蜂の魔物だぁぁぁっ!? 」
この場を目撃していた村人たちが、
蜘蛛の子を散らすように あちこちに逃げまどっていた。
おれと女性の前に、バーントさんとジョンと
ヴィラックが出てきて 剣を抜いて構え――
「待ってっ!! セイは……私の
「あっ、危ないからっ!? 」
セイという男性の方へ行こうとしたキエラさんを、
おれは慌てて押し留めていた。
見ると、ジョンやバーントさんは、
どうするのが良いのか測りかねているみたいだし、
ヴィラックも何を考えているのか 様子見をしていて、
アルテナは未だに剣を抜かないまま、
飛びこんできた彼の攻撃を さばいていた。
アルテナも、ジョンもバーントさんも、
彼が正気に戻るのなら、それを望んでいるみたいだった。
おれだって……
おれだって、助けられるものなら助けたいよ……
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