今年の年末年始はめちゃくちゃ忙しくなりそうだ

 さて、11月半ばの七五三が終わって、その後もなんやかんやしていたら、霜月(11月)も終わり、師走にはいると例年と同様に、建物の大掃除である煤掃をドタバタしながらやったり、桜たちに頼んで店の前で餅つきをやったり、浅草寺の観音市などに参加して買い物をして新年を迎える準備をしたりと毎日が忙しい。


 今年は品川にも遊郭ができてそちらも見ないといけないし、処刑された弾左衛門のあとを引き継いでいる権利も結構あったりするからなおさらな。


「今年の年末は本当大変そうだよな」


「頑張ってください、貴方。

 三河屋はお母様と私でもなんとかなると思いますよ」


「ああ、妙にも苦労ばかりかけてすまん」


 俺が三河屋にいないことが多いため、三河屋へあちこちから訪ねてくる者に対する対応は妙の、役目になってしまってる。


「いえいえ、忙しいのは良いことですわ」


「まあ暇で年越しの資金繰りに困るよりはずっといいけどな」


「はい、実家もその辺の心配はございませんし」


 なんだかんだで勧進興行のときに使う木材とかを買ってもいるので妙の実家も経営は順調だ。


 そして年末開催の素人のど自慢や、大見世対抗歌合戦の準備も進んでいる。


「今年は品川でもやるしな」


「人を集めるには良いですからね」


 正月のカピタン江戸参府に今年も一枚噛ませてもらおうとも思ってるし、正月には門付芸人が正月の松の内が稼ぎ時と集まってくるので、正直にいえば今年の年末年始は死ぬほど忙しくなりそうだ。


「今年は夏の遊郭対抗戦も潰れちまったし、その分も年末は派手にやりたいな」


 俺がそう言うと二代目藤乃がうなずいて言う。


「歌だけではなく歌劇なども遊郭対抗で行ったらいいのではないのでやすか?」


「おお、たしかにそりゃいいな」


 弁財天音楽堂をつかって歌劇を楽しんでもらうというのはたしかに良さそうだ。


 もっともかかる時間を考えると歌合戦よりは参加数をかなり絞らないとまずいだろうけど。


「カピタンへ出す鍋なんかの料理もまた新しいものを出したいところだな 」


「やはり同じでは飽きられてしまいますものね」


 とは言えこの時代の豚肉や牛肉料理は、むしろ俺たちがカピタンの料理人に習ったほうがいいかもしれないけど、キャベツの千切りにとんかつを添えて出すってのは、今のオランダにはないはずだからきっと受けると思う。


 とんかつにかけるのもソースじゃなくて、味噌をベースにした味噌カツを出してみてもいいか。


 醤油や味噌の味はオランダ人たちには結構珍しいだろうけど、拒否はされないとおもうからな。

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