そろそろ一度原点に立ち返るべきかな、若い衆への対応を考えてみようか

 さて、21世紀の風俗の男子従業員でも江戸、時代の吉原の若い衆でも、入って最初にやるのは掃除だ。


「さぶ、仕事にはなれたか?」


 俺は掃除をしている最近新しく雇った中郎の三郎に声をかけた。


「へい、ようやくなれてきやした」


 21世紀におけるコンビニのバイトやファーストフードの店員などと同じように、風俗の店員などは、誰にでもできると思われてる仕事だが、実際は誰でもできるというほど簡単じゃなかったりするから、初日だけ来てすぐにこなくなるやつも多い。


 でまあ掃除も誰でもできるというわけでもなく正確に言うなら、客や女の子が不快にならないようにちゃんと隅々まで問題なく掃除ができるかというのが大事。


 そりゃ床に掃除機をかけるだけなら簡単そうだが、椅子などをちゃんとどけてそこも掃除したりするかなども大事だ。


 トイレなら便座の裏とか下の方とか床など見えづらい所もちゃんと掃除するとかな。


「まあ、ちゃんと出来てるんじゃないか?」


「へい、ありがとうございやす」


 そういうとこに気が付き、なおかつ真面目にやれるやつってのは意外と少ないんだが、江戸時代でもそういうのはそんなに変わらん。


 遊郭で働くことになる男というのは何らかの事情があるからな。


 21世紀の風俗に話を戻すと、掃除がある程度わかったとみなされたら備品の補充や確認をやることになる。


 金が絡むから在庫がなくなったときの発注ができるようになるのはもう少し後だが、うがい薬のイソジンや消毒石鹸のグリンス、プレイに必須なローション、お客様に渡す名刺や名前を書くボールペンなどが減っていないか、ちゃんと書けるか確かめて減っていれば補充し、なくなっていれば新しく在庫から出して、女の子が仕事に行くときにそれらの入ったバックを渡したりするんだが、そういったことでも気の利いたことができるかどうかというのは重要だ。


 だいたい入社1ヶ月~2ヶ月で辞めずにこれらが問題なく仕事が出来るようになったら、受付に入るようになり、朝などの女の子の出勤確認やお客さんからの予約や問い合わせの電話対応、店頭でのお客さんとの接客などもやるようになる。


 それをやるだけならそこまでは難しくないのだが、女の子を予定通りちゃんと出勤させて人数を確保したり、お客さんに金額や指名写真で納得してもらったりして、お金を払って遊んでもらえる数を増やすとなると結構難しい。


 お客さんの好みに合う女の子をうまく勧めてリピーターになってもらえるかもここで決まるしな。


 同じくらいにブログや風俗媒体、メルマガなどの更新や情報発信も行う。


 それに慣れてきたら風俗嬢のいろいろな管理、たとえば出勤予定とか生理の予定でいつ休むとか、トラブルが合ったときは精神的なフォローなども必要だ。


 取材のために動画や写真の撮影をしたりその編集や修正、撮影スタジオへの同行、イベントの企画やその提示などもあるな。


 吉原だとまずは不寝番や二階廻のような見回りに異動。


 この時点では遊女との直接的な接点はないが、そこでもある程度実績があれば見世番や二階番のような遊女と直接的な話や世話をするポジションになる。


 で店長になれば面接をして採用不採用を決め、必要なら講習で女の子へサービスの流れを教え、売上の把握を行う。


 一般的な風俗店の場合だと、店長になるために必要な期間は2年~3年くらい。


 まあ店長が飛んで半年でそれをやらされるなんてこともあるけどな。


 オーナーがいれば男子従業員の面接はオーナーが行うこともあるな。


 遊郭だと番頭は金の管理をして、物書きは書類を書くが、禿や若い衆などを採用するかしないかは楼主や内儀が決定する。


 風俗の経営者は男子従業員は大事じゃないと思ってるんじゃないかと思うかもしれないが、そうでもあるとも言えるし、そうでもないとも言える。


 特に21世紀における風俗店経営は、男性スタッフの育成がすべて。


 売上の上下も、お客さんが遊ぶか遊ばないか決めるのも、可愛い女の子を集めるのも、お店に入店してくれるのも、お客様が喜ぶ接客術を教えるのも、お客様がお店を何度もリピートしてくれるのも、全ては男性スタッフ次第で、入れ替わりが激しい女性スタッフのルックスやサービスを維持することができるかどうかは、男性スタッフ次第だからだ。


 21世紀の風俗でも売上をあげられるスタッフにはなるべく長く続けてほしいが、実際はよくわからない理由でいきなりいなくなることや、店の金を着服してクビになることも多い。


 そしてマニュアルだけあれば簡単に仕事ができるようになるというものでもないのが難しいところだが、こまめに若い衆の様子を見て声をかけ、なるベくわからないところや悩みなどは聞いていこうと思う。


 というかそれくらいしかできないんだよな。


 お客さんも人、商品である遊女も人、管理する側も人だから教育も難しいんだよな。


 江戸時代の遊女のほうが基本的に簡単に店を変えることが出来ないうえに、働く期間も長いからまだ楽ではあるけど。


 品川とか京都なんかに行くのも俺じゃなくて別に任せられる奴を抜擢するべきではあるよな。

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