雪組歌劇の初公演は”新釈源氏物語”
さて今日は玉屋の歌劇団、雪組の歌劇のお披露目初公演だ。
「さてと雪組はどんな内容なのかな?」
俺は玉屋に劇場の使用許可は出したが歌劇の中身についての手伝いはしないから歌劇の中身についてはまったく知らない。
そして題目を見たところ”新釈源氏物語”ときた。
「ほほう、これはこれで面白そうだな」
やがて歌劇が始まった。
”昔々平安の時代の京の都、時の帝には桐壺更衣という最愛の女性がいましたが彼女は家の身分が低いのに今上から溺愛されていたので周りの后候補の女性からひどく妬まれてしまったのです。”
「はあ、私はどうすればいいのでしょう」
”そして桐壺には男子が生まれたが度重なる嫌がらせに病に倒れ亡くなってしまう。”
「おかあさーん」
”残された若君は後ろ盾のない皇族のままで世継ぎ争いに巻き込まれて大変なことになるよりはと源の姓を与えられて臣籍に下され新たに屋敷を与えられたのでした。
そして彼は美しい容貌によって”光の君”と呼ばれることになったのです”
“光の君は12歳で元服し、妻に左大臣の娘、
「葵の上これからよろしく」
「はい、こちらこそ」
”しかし葵の上のほうが四つ年上でありながらも母親とにているわけではない。葵の上とはどうも馴染めない……その仲はうまく行っていなかったのです。
その後、帝は桐壺更衣とそっくりという評判の藤壺の宮を新たに後宮にいれるのですが、今上と一緒にいた光源氏も母親そっくりの藤壺の宮を好きになってしまうのでした。”
「藤壺様……たしかに母上とそっくりだ」
”しかし、光の君は藤壺の宮に似た少女である紫の上が寂しさでないているのをみて、夜も明けきらないうちに牛車で屋敷に乗り付けると寝ていた少女を抱きかかえ、牛車に乗せて家へ連れて行ってしまったのです。”
「ああ、藤壺の宮は私の母親になってくれるかもしれない女性だ。
しかし、紫の上も母上そっくりだ。
私は一体どうすればいいのだろう?」
俺はひとりツッコミを入れる。
「いやいやそれどうみても車を使った
”そう言いながらも光の君は宮廷の女房である伊予介の後妻
「私と一夜を過ごしませんか」
「それは困ります」
「いやよいやよも好きのうちですかな」
”さらには
「私と一夜を過ごしませんか」
「はい、私で良ければ」
「源氏様はなぜ私の所へ来てくださらなくなったの?」
”さらには深窓の令嬢
少々外見がかわいらしくない程度ならまだ良いが芸も教養もなく徹底して醜いと却って彼女がかわいそうに思え親身に面倒を見始める光の君。
貧乏であった末摘花とその家人も生活が安定し醜さによる重度の恥ずかしがりも少しずつ解消されていった”
「ありがとうございます源氏様」
「あ、うん、生活が順調なようで何よりだ」
”そのころ帝に仕える女官で、
上品で才気もあるが、58歳という老いた身でありながらまだまだ色恋を好む彼女にも光の君は戯れにも一夜を過ごすが、さすがに「これはないな」とその後おざなりに扱ってしまう”
「一晩一緒に過ごしたというのになぜにこうつれなくされるのか」
「うむ、流石に年が年故にな」
”源典侍は恨み事を言い、帝はそれをからかってお笑いになった。
さらに弘徽殿女御の妹である
しかし、彼に手を出されるのはそれなりに女性側からも優越感をえられるものでも有ったのです。
なにせ光の君はこの上ない美青年で源氏の出世頭でも有ったのですから”
「こうしてみると光源氏って男は最悪だよなぁ」
なんで源氏物語が素晴らしい物語とされるのかこうして要点だけかいつまんでみると全くわからんな。
”そして光の君は自宅で育てていた紫の上が成人し、彼女を手篭めにしようとしたところで、今まで付き合っては捨ててきた空蝉、軒端荻、六条御息所、夕顔、源典侍、朧月夜と女性の生霊に襲われて頭からたらいを被せられてボコボコにされてしまうのです”
「こいつはまた斬新な展開で。
もっとも”葵”が生霊に殺されるってのはやっぱまずいよな」
結局、浮気にこりた光の君は葵の上のもとに戻って葵の上と仲直りし、二人の間には
めでたしめでたし”
「そりゃまあ”葵”を粗末に扱うわけには行かねえもんな。
めでたしめでたし、でいいのかね?」
これは遊郭での遊女への浮気を禁ずるという意味合いと、葵の御紋つまり徳川に対して楯突くと大変なことになるぞとということなのだろうか?
なかなかに面白い展開では有ったと思うけどな。
そして玉屋が俺を見つけて声をかけてきた。
「おう、三河屋、見てたのか」
「ああ、見させてもらったがなかなか面白かったと思うぜ」
「はは、そういってもらえりゃ嬉しいね。
遊女たちも皆頑張ったしな」
「確かに脱衣劇をやろうとしていた頃に比べればみんな生き生きしてるな」
玉屋は頷く。
「ああ、俺にやらされるんじゃなくてあいつらがやりたいって言い出したんでな。
そしてやるなら三河屋や十字屋に負けないようにしたいって頑張って練習してたぜ」
「ああ、そいつはいいことだ。
嫌々やらされるのと自分がやりたいことをやるのじゃやっぱ結果は違ってくるよ」
「ああ俺もそう思うぜ」
そんな感じで雑談を交わした俺たちは一緒に三河屋に戻った。
「さて、歌劇の正本で良さげなのは来てるかな?」
積み上がった本の山に玉屋が感嘆している。
「こりゃまた随分集まってるな」
俺は笑う。
「そりゃ自分がかいた脚本が採用されりゃあ賞金も出るしそれが劇になるんだ。結構みんなやる気のある作品ばかりだぜ」
玉屋も頷く。
「そいつはありがたいな、やっぱり歌劇をいちから考えるのは大変だってつくづく分かったし」
「ああ、そいつは俺もそうだ」
こうして俺と玉屋、それに妙や見世のみんなで本を読んではあーでもないこうでもないと批評しつつ賞の選出は順調に進んでいる。
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