#17
聡太朗の帰ったあと、透は実家の母へとメールを打った。
『次の仕事が決まったら連絡する。心配しなくても大丈夫だから』
手短に文章を作成すると文面を見返すこともなく送信し、すぐにスマートフォンの電源を切った。
しばらく、そのままスマートフォンの画面を見ていたが、やがて立ち上がるとゴミ袋を取り出してその中へスマートフォンを突っ込んだ。
そして、次々と机の上のマグカップや時計を放り込んでいく。
要らない要らない要らない要らない要らない。
要らない要らない要らない要らない要らない。
要らない要らない要らない要らない要らない。
その後も手あたり次第に身の回りの物をゴミ袋へと流し込んでいったが、突然気分が悪くなり台所のシンクへ駆け寄って吐いた。
昨日から食事を摂っていなかったこともあってか、胃液しか出てこなかった。
蛇口をひねって水で口をゆすぐ。
振り返り、散らかった部屋を見た。
この部屋には自分のものは何もない気がした。
自分の一部と言えるものは、何もない。
すべて捨て去ったとしても、きっと自分には何も残っていないことを知るだけなのだろう。
そんなことを考えて、透は静かに泣いた。
泣きながら、全てを悔やんだ。
消えそうな声で「ごめん」と呟いた。
明け方、透は部床に転がる部屋の鍵をだけを手に、マンションを出た。
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