第13話 店主、ギルドに再来店。


今日は以前ギルドでダッカさんに依頼した、ポーション作成に必要な材料採取の期限の日だ。


彼女が依頼をこなしてくれていたら、今日ギルドで受け取れるはずだ。


「少々お待ちいただけますか、今から確認いたしますので」


依頼物が納品されているのか確認するために時間が必要だ。


さて、それまでの時間をどうやって潰そうか。


待合場所にて座っておとなしく待っていようかと思ったらシスターさんがいた。今日は勇者さんは一緒じゃないようだ。


「こんにちは、シスターさん」


「これは店主様、依頼をされにきたのですか?」


「いえ、今日は依頼品の受け取りに来たんですよ」


「あぁ、ポーションの調合用ですか?」


「恥ずかしながら在庫を切らしてしまって、ポション草の採取をお願いしたんです」


「店主様のポーションには私達も助けられているので、またの機会があれば依頼をお受けさせていただきますよ?」


「はい、そのときはお願いします」


そう、ウチのポーションは勇者業の御用達だ。


そのわりに、あまり宣伝効果も感じないんだけどな。そこそこ上質なポーションのはずなんだけど。


シスターさんは依頼の受諾にでも来たんだろうな。


「シスターさんは依頼を受けに?」


「はい、短期的な依頼を探しに来たのですが、少し悩んでいまして……」


「……護衛の依頼ですか?」


「隣街までの依頼ですしそれほど期間も長くないのですが、私達だけでは人数が足りませんし他のパーティーの方をお待ちするにも、いつ依頼を始められるのか分かりませんので……」


採取や討伐の依頼と違って、護衛の依頼は一定の人数が求められることが一般的だ。


勇者さんとシスターさんの二人だけでは受けにくい類に入るだろう。王様もお厳しい条件をだしたもんだな。


……勇者業といえばあのヴァンパイアさんはどうなったんだろう。


「そういえば、ローブを着て見事な顎鬚をたくわえたおじいさんが訪ねてきませんでした?」


「いえ、来ていらっしゃらないですよ?」


「そうですか。先日、魔法使いらしきおじいさんが店に来たので、勇者さん達を紹介させてもらったんですけど……」


「魔法使いのおじいさんですか。もしお会いできたら声をかけさせていただこうと思います」


ヴァンさんはまだ会えてなかったのか。


百年も寝ていたらしいし、いろいろと街や外を見て回っているのかもしれないな。


「お待たせしました、依頼品の確認が出来ました。ポション草五十茎ですね、依頼書にサインをお願いします」


「はい、わかりました」


シスターさんと話している間に依頼確認も終わったみたいだ。


受付に向かいポション草を受け取り、サインを書き報酬のお金を受付嬢さんに渡そうとしたら、隣から手を添えられた。


「……もらい」


「ダッカさん、いつの間にいたんですか?」


「……いま」


……神出鬼没な人だ。


「依頼ありがとうございました。良いものばかりですから、ポーションもしっかり作れそうです。ダッカさんも買いに来てくださいね」


「……もち」


「これはダッカ様。以前の依頼ではお世話になりました」


「……おけ」


「その大剣で雑草をばっさばっさと刈っていくお姿は実に見事でした!」


「……てれ」


「またご一緒することがあればよろしくお願いいたします!」


「……りょ」


へぇ、シスターさん達は一緒に依頼を受けたことがあるそうだな。


でも、何の依頼を受けてるんだ勇者さん達は……。


レベル上げはいいのか。


「シスターさんは受ける依頼は決めたんですか?」


「はい、今回は調査依頼を受けようかと。なんでも、ゴブリンの目撃情報が近辺で多数に発生しているようでして」


「ゴブリンが森の中から出てきているということですか」


「それも多数ということですので、森の中へ調査に行く依頼ですね」


「……気をつけてくださいね」


「うふふ、ありがとうございます。何か異常が発生してないかの確認だけなので大丈夫ですよ」


ゴブリン達は普段は森の中でおとなしくしているモンスターだ。


特に人を襲うということもないので大丈夫だとは思うが、何で森から出てきているんだろうな。


何か森の中であったのか?いかんいかんフラグになりそうだ。


くいっ、くいっ


ダッカさんに服を引っ張られた。


「どうしました?」


「……串」


「また食べたいんですか?」


「……まる」


「それじゃあシスターさんも誘って食べていきましょうか。」


「……ん」


どうやら、屋台の串焼きがお気に召したようだ。また買い占めることになりそうだな。


俺の報酬もあるんだから自分の分は自分で買ってもらいたいが、シスターさんも一緒だからなぁ。片方にだけおごるというのも申し訳ない気がする。


シスターさんは逆にとても遠慮しそうだが。




「これはとても美味しいですね!」


「……美味美味」


モシャモシャモシャモシャ



そ、その笑顔が俺にとってはプ、プライスレスさ。






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「こんなにも勉強をしろというのかシスター。……無理だよー!!」

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