金切安土岐子という名のレディースリーダー

昔の話をしよう

とは言っても俺の渓匠高校入学したての頃のことだが

あれは、桜並木が校門から50㍍くらいまで並んでた場所に俺は佇んでいた。

なんて事はない高校1年の入学初日。入学式も済んで簡単なホームルームがあった今日はそのまま帰るだけでいいのだが、そこはきれいな桜を何とはなしに見ていたかった。そんな衝動に狩られたからだ

それなのに

「いいか!!てめえら!!嘗められたらそこで終わりなんだよ!!」

「・・・・・・」

桜並木から感じる穏やかさとは裏腹に反対方向にあるボロボロの木製武道場前で赤髪長髪の女が目付きの悪そうな女共20数人はいる中で怒号を飛び散らせていた

その赤髪長髪の女の事はよく知っている

金切安土岐子(かなきりやす ときこ)。俺の姉その人で、レディースのリーダーをやっている

「姉貴。雰囲気ぶち壊してる」

「ああん?んだとコラ!嘗めた口聞いてんなら痛い目見るぞ兄ちゃん」

その姉がこちらを鋭い眼差しで威嚇してきた

「俺あなたの姉ですよねえ!?なんか色々間違ってると思うんですけど!?」

言っておきます地の文の説明欄に不備はございません。繰り返します地の文の説明欄に不備はございません

「チッ!・・・・・・しょうがねえだろ?部下の前で姉弟面してたら示しがつかねえだろ」

唾を吐きかけ、首に腕を回して顔を寄せて小さくそう言ってくる姉からは柑橘系の匂いがした

「姉貴。彼氏はどうした?」

「あたしにそんなものはいない」

「いや、いただろ?3年前に」

「い!な!い!!」

吐息を感じる近さで大声は公害認定してもいいと思う

まあ、この話はまた後日ということで。

実の姉貴との会話なんてあまりしたくないし、ってか女なんだなって自分が自覚したときの罪悪感というか気持ち悪さたるや・・・

いや、勿論シスコンではないぞ俺は。

皆様のご理解とご協力をお願いします

そうこうしていると姉貴の後ろからひょっこりと出てきた

「姐さん。そいつ、誰ッスか」

八重歯に猫目で肩までの茶髪ショートの小柄体型の女が

「馬鹿!リーダーの弟の金切安時泰さんだよ!」

「ちょっと待て。なぜ知ってるそこ」

今、紹介してきたマスクに緑髪のセミロング女とは知りあいでもなんでもない

「まあ。ちょっとな」

はぐらかされた。そこは話してくれよ

「とにかく知ってるんだ」

一体どこまで知ってるんだと気になるところだけどこんだけのヤンキー集団に強気な態度に出るだけの根性はないので別ルートで調べる事にする

「あれ?確か今、桜奈(おうな)。家出して友達の家にいるッスからそこからじゃないんスか?」

調べるまでのなかった

その証拠に

「お!ま!え!は!!なんでそういう事を言うんだよ!!そいつには私との関係はない事を知られない条件にしてるんだよ!!」

マスク女は猫目の女にヘッドロックを噛ましている

「痛い痛いッス!!ギブギブ!!」

なるほど、確かにどなたかはご存じないがヤンキーと繋がってると知られるのはよろしくないと思う気持ちは理解できる

ですが、そのどこぞと知らぬ方に言う。俺も同じ立場だよと

逆になぜ知らないと

「で、それが誰とか」

「アン?」

「いえ、なんでもありません」

一睨みされて萎縮しないような肝っ玉は持ち合わせていなかったり

因みに姉貴は対象外

さっきの彼氏話が『部下にばらされたくなくば下手な事するな』という牽制になっている

そのためのヒソヒソ話

「なるほど、ふむふむ」

先程、ヘッドロック噛まされた人は俺をそのヒソヒソ話してた時の距離で観察してきた

「な!なにか!?」

この人、何気に俺のストライクゾーンだったりするんだけど、本人は気づいてるだろうか

いきなりのストライクゾーンの登場アンド超至近距離に共るのもお許し頂きたい

いや、誰にとかないけどさ

にしてもこの人、近くで見ると本当にかわいい

大きな猫目然り、化粧はしてるけど派手な印象はなくあくまで軽く自然に見える感じ、ナチュラルメイクってやつ?で茶髪のショートも綺麗だし顔から分かる白い肌からは手入れが行き届いてる事が分かる

姉貴もそうだけど、身内じゃない分素直にこちらの方が女を意識してしまう

「よし、決めたッス。今日からあなたの事をアニキと呼ぶッス」

と、俺の中の思春期モード全開脳がフリーズを起こす発言をその方は言ってのけた

何せ、急転直下の身内宣言だからだ

アニキ?アニキって言いましたよね、あなた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る