俺はJSにしか興味はないんだ!

「お邪魔しまーす」

 そんな言葉と共に、紅葉は透の部屋に入ってきた。

 紅葉は透の部屋の合鍵を持っているので、あっさりと入ることができる。

「……あれ?」

 玄関で靴を脱ぎながら、紅葉は首を傾げる。

 かつて、合鍵を使い今回のようにこっそり部屋に侵入した時、偶然オナニー中の透に遭遇してしまい、透がぶちギレたことがあった。

それ以降、合鍵を使って勝手に入ろうものなら、透がとてつもない勢いで怒るのだが、今日はそれがない。

 学校にまともに通っていない透は、基本的に家にいる。いないのは、打ち合わせなどで編集部に呼ばれている時のみ。

 そういう場合、紅葉は透が戻るのを待たずに帰ってしまうのだが、

「透? いないの?」

 一応、リビングの方に向けて声をかける。

「――から動くな!」

「ん……?」

 声が聞こえた。それも、割と切迫した声。

「透、いるなら返事くらいしてよ」

 しかし、紅葉はそんな透の変化を気にせずリビングまで歩を進め、そのままドアを開ける。

 ――そこには、紅葉の予想だにしない光景が広がっていた。

「師匠! 私を弟子にしてください!」

「断る! というか暴れるな! 大人しくしてろ!」

 年の頃は十四、五歳といったところ。整った顔立ち。艶やかな、腰の辺りまで伸びた黒髪。

 そんな美少女が、なぜか乱れたセーラー服姿で、部屋の主である透に押し倒されていた。

「…………」

「も、紅葉!? 何でここに――」

「――もしもし、警察ですか?」

 紅葉の行動は早かった。

 目にも止まらぬ速度でスマホのロックを解除し、そのまま一一〇と打ち込んだ。

「ちょっと待てええええ!」

 半ば叫ぶような透の制止の声が、リビングに響く。

 スマホを耳から離し、ジト目をむける紅葉。

「……いつかはやると思ってた」

「違う! こいつをよく見ろ!」

 言われて、紅葉は少女を見つめる。同性であるにも関わらず、思わずドキッとしてしまうような美しい相貌。

 服は少し着崩れているが、何か変なことをされた痕跡は見つからない。

「大丈夫、未遂なら執行猶予が付くはずだから」

「だから違ああああう!」

「そうです! 私と師匠は同意なので犯罪ではありません!」

 そこでなぜか少女が話に割り込んでくる。

「くだらない嘘を吐くな! 俺は貴様のようなJCに興味はない! 手を出してほしければJSになってから出直せ!」

「そ、そんなあ……」

 透のギリギリ(アウト)な発言に、がくりとその場に膝をつく少女。

「…………」

 紅葉は、そんな二人のやり取りを見つめならがらボソッと、

「……出すんだ。JSなら手を出すんだ」

 ゾッとするような声音で呟くのだった。

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