JCの訪問

「疲れた……」

 透は疲労を滲ませた声音で呟く。

 現在、透は編集部での打ち合わせを終え、アパートへ帰る途中だった。

「あのクソ担当、少しは作家のことも労れよな……」

 今回行われた打ち合わせは、次回の新刊『JSは最高だぜ!』の五巻に関するものだった。

「ついこの前四巻を終えたばかりなのにもう次の仕事とか、編集部は悪魔かよ!」

 実際のところ、絶えずに仕事が来るというのは作家にとっては幸せなことだ。仕事のない作家は無職と一緒。ヘタをすると、編集部から切り捨てられてしまう。それに比べれば多少忙しいというのは大分マシだろう。

 透も理屈では理解しているが、それでも時にはこうして愚痴を溢したくなることがある。

「……まあ、やるしかないか」

 そう言って、自身を奮起させる。

 モチベーションをある程度コントロールできないようでは、作家などやってられない。

 などと、色々なことを考えているうちにアパートの前に着いた。

 東京都内にしては家賃の安い、築二十年の古いアパート。透の部屋は二階の一番奥にある。

「ん……?」

 自分の部屋の前まで行き、ドアノブに手をかけたところで違和感に気付いた。

「俺、鍵は閉めた……よな?」

 家を出る直前のことを思い返すが、確かに鍵はかけていた。

 ――まさか泥棒?

 一瞬そんな考えが頭をよぎったが、自分の部屋には金目のものは置いてないことを思い出し、否定する。

 置いてあるのは、JSに関するものだけ。

 変態ロリコンからすればお宝だろうが、それ以外の者にとっては事案が発生するようなものしかない。

「まあ、開けてみれば分かるか……」

 恐る恐るといった感じで、ドアを開く。

 するとそこには、


「おかえりなさいませ、師匠!」


「……誰?」

 セーラー服を着た、知らない女の子がいた。

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