望んだ光景を前に僕は走り出す

Faln

1話 いつも通りじゃなくなったあの日

キーンコーンカーンコーン────


 「それじゃあ…起立!そこマフラー取って!お前も!」


 「うるさいなぁ…外したからちゃっちゃとしろやっ…」


 「…はい、おはようございますっ」


 ガラガラガラ────


 「はい、遅刻な…これで6回目やぞ!次はもっとはよ来ぃや?」


 「は?遅刻ちゃうやろ!まじだるいわぁ…」


 「…はぁ」


 また今日もいつも通りの高校生活が始まった。

 もう数週間で3学期が終わり春休みに入る。

 そして今は1時間目が始まる前のホームルームが終わった。

 朝のホームルームを見て察した人もいるだろう。

 このクラス…いや、この学校は不良が湧いている。

 いわゆるヤンキーというやつだ。


 この高校は関西のある府内で上から4、5番目に頭が悪い──偏差値が低い学校だ。

 なので勉強をしてこなかった頭もマナーの悪いヤンキーが多い…が勉強をしてこなかったヤンキーじゃない普通の人もいるし、

 少し上の学校を受けれたレベルの人や頭のいい高校を受けて落ち、

 ここは二次募集をしていたのでそれでここに来た人もいる。


 ちなみに俺…この底辺校の高校1年、

 水瀬ミナセ 春ハルはヤンキーではないが、勉強をしてこなかった人だ。

 何故しなかったかって?

 面倒臭い、面白くない、遊びたい、難しい、手が痛い、肩がこる、しんどい…コレがしなかった理由だ。

 でも、もうすぐ2年になる俺は、

 この1年…勉強は勿論しなかったが、

 この底辺校で手こずる事は少ししかなかった。

 ふっふ〜んっ流石、俺。


 そんなことより次の授業の準備せな!

 えっと…ん、数学か…。

 出席番号の前半後半で分割されててどっちかは移動やけど後半の俺は移動無し、このまま教室か…

 動かんでいいし、後半ヤンキー少ないしラッキー!

 しかも先生も優しいし緩いしもっとラッキー!!


 キーンコーンカーンコーン────


 あ、もう休み時間終わりか。

 移動教室じゃなくても席移動はあるし、

 そっちの席に移動しないと…

 よいしょっ…!?


 「おはよーーみっちゃん!!!」


 彼女は勉強してこなかったヤンキーじゃない人(多分)でヤンキーに刃向かったりもする勇気あるぽっちゃり女子だ。

 俺は人見知りで無言で目を逸らすといつも下や横から顔を覗き込むように元気よく挨拶してくる。

 “みっちゃん"とは彼女が勝手に付け、彼女だけが呼んでいる俺のあだ名だ。

 最高のネーミングセンスじゃないか…クソ野郎っ!

 俺は目を逸らし教科書を持ち、

 あの子を無視って向こうの席に着いた。


 「んじゃ、もー挨拶はいーから昨日配ったプリント出してくれる?」


 そしていつも通り1時間目が始まったと思ったその時だった


 「…皆出したー?なら、えっとここ見──」


 「キャーーーーッ!!」


 「……ん、じゃあここ見てもらえる?」


 この学校じゃ誰かが叫んでいるのは毎時間。

 注意しても止めないし止まないので仕方ないといえば仕方ない事なのである。

 先生はまた誰かが意味も無く叫んでいるのだろうと一瞬止まったがまた授業を始めた…が悲鳴は鳴り止まない


 「キャーッ!何コレっ!?無理無理無理無理無理無理無────」


 「うるさいなぁ…」


 そう言いながら悲鳴が鳴り止まない外をカーテンを開け窓から覗き込んだ


 「え?」


 普段眠そうで驚いた表情など一切しない先生は目を見開いたまま固まって動かない。

 それを見た少しヤンチャな生徒が3名ほど窓の外へと顔を出し

 …同じく固まって動かなくなった。

 生徒達はおかしいと思い、

 寝てる奴以外全員席を立ち、

 窓の方へ向かった。

 俺も先に窓を開け覗いている友達の横からその友達が見ている方を見た


 「ぇ…?何これ…」


 友達の視線の先に広がっていた光景。

 それはまるで戦争が起きたのかと思わせる程の地獄絵図だった。


 

 この日この瞬間から世界は一変とした…。

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