第2話 0愚者(フール)「旅の始まりであり、終わり」の巻

私は、会社が午後からの日に予約を入れた。

可能な限りスピリチュアルカウンセリングの事は

考えないように決めたつもりだった。

そう思うと余計に考えてしまうのが人の常である。

さっさと忘れてしまえばいいものの、

ことあるごとにそのスピリチュアルカウンセリングについて

思いをはせるまでに到った。

情報は友だちの話しかなかったものの、結構面白いくらいに色々なイメージが沸く。

そんなこんなで興奮がなかなか冷めなかった。


予約した当日の朝、私はとても不思議な感覚で目が覚めた。

ふわっとした空気に包まれて、少しゆらゆらと炎がゆれていたり、や木々がざわざわ風に吹かれている感覚が一瞬頭をよぎった。

ここぞとばかりに聞きたいことを聞くぞ!と

変な決意をして先方に向かってはみたものの

自分は本気でスピリチュアルな世界を信じの?

と疑っている自分もちらほら顔を出す。

その日は確か木曜日で、午後のかなり遅い時間からの出勤だったので、

仕事に支障をきたすことはないと

全然関係ないところに落としどころをつけている自分がいて、

なんだか自分もこういうことでパニックになるのかと

少し自嘲気味に自分に突っ込む。


そんなこんなしている間に目的地に到着。

私はとある田舎の県庁所在地に住んでいて

生まれてから一度もこの街を出たことがない。

観光資源はしっかりあるのだが、PRはあまり上手くない東北の片田舎。

正直本音を言えば都会にも憧れはあるのだが、

人口が30万人程だと住みやすいので

今日までこの街にお世話になっている。


ひっそりとした商店街の隅っこに、そのお店はあった。

お店の看板は全く見当たらず、ここが何を生業にしてるお店か全くわからない。

普通だったら「占い」とでっかい看板が出ていそうなのだが、

それを出していないということは

いやにポリシーがあるのだろうと、勝手に思った。

以前は事務所だったのか、玄関は上がガラス張りのアルミの引き戸になっていたので、中を見渡すことが出来た。

内装はスピリチュアルなイメージを髣髴させる、エスニック調のインテリアで、

像のような置物がおいてある。

雰囲気は、神聖で嫌味がなく、良い香りが立ち込めている。

多分お香を焚いているのかもしれない。

そして今にもサリーを着た、インドの女性が出てきて、

踊りだしそうな雰囲気の場所だ。

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