内なる心の向く方向

「はあ……はあ……」

「もう、ここで果てるしかないのでしょうか……?」

「嫌じゃい! 必ずどこかに何かあるはず」

「もう部屋中探しましたよ……うぅ……」


 なぜこんなことになってしまったのだろう。俺がこの街に転校してきたことが間違いだったのか。それとも、彼女たちと関わるようになってしまったことが間違いだったのだろうか。そんな風に思い出を自分で穢してしまい、挙句の果てに心まで穢してしまっているように思えてきてしまう。


 俺はある事情でこの街の私立高校に転校した。そこから始まったのが、「日常美探索部」という、とても珍しく今どきの高校生がやらないような奇抜な本質を持つ部活動だった。俺意外は女子。最初は居心地も悪く、あまり意欲的に活動できなかったが、皆と関り、遊び、悩み、様々な壁を乗り越えて、俺はやっと心を解放し始めたのに。


「あはは……もう、厚くて苦しいですね……」


 落ち着きのある彼女はそういいながら制服のボタンをいくつか外して寝転がる。肌から抽出される汗は肌を潤し、そのまま衣服までもを潤していく。その光景はあたかも女神が着衣水浴びをした後のごとく尊く、透けて見える下着と肌も相まって艶めかしい。


(い、いかん……焦りと暑さで頭が……)


「なんじゃいなんじゃい! 本当に体力のない奴じゃい! ……でも、あたしも疲れてきたかも……」


 小柄で活発な彼女はそういって、部屋にあった何に使っていたのか分からない箱の上にちょこんと乗る。彼女は羞恥心というものがどうもかけていて、今もちょうど俺の目線真ん中には、薄ピンク色の下着がこちらを覗いている。


(二人とも、暑さでおかしくなってるのか? まあ、俺が気にしなければいいんだが……)


「もう、二人とも、だらしないですよ……」


 しっかり者の部長である彼女はそう言って、胡坐をかいて座っていた俺の太ももに頭を乗せて寝転がってきた。確かに彼女は服もしっかりと来ているし、汗もすぐにタオルでふき取っていて透けていない。しかし、その行動と俺に向けてくる安心しきった顔を見ると、また別の情動が触れ動き、扉を強引に開けて出てきそうになる。


(一体なんなんだ……みんないつも以上にガードが緩すぎないか?)


 確かに最近、妙にガードが緩いときは合ったが、ここまでの物は初めてかもしれない。こうなってしまっては、目のやり場に困るので、目を瞑ってやり過ごすことにした。その時


《こっちだよ》


 聞き覚えのない声が聞こえ、聞こえた方向に目をやると、いつの間にかそこに扉があって、俺に開けられるのを待っているように佇んでいた。


 俺とみんなはその扉を開けて進んでいく。その先に待つ言いようのない悲哀に満ちた結末なんて考える余裕も無いままに。


 俺は人間だ。それだけは自信を持って言える。しかし、彼女たちは? 正直な話し、初めて会った時から違和感があった。そもそもの話し、なぜおれは転校することになったのかも明確に理解していなかった。もしかしたら、今いる街、この世界に対してもその疑問はあったのかもしれない。それらすべての疑問はただの妄想ではないことを、この扉の奥にいる存在は教えてくれた。そしてその事実は彼女たちにとってはとても辛いものだろうとも理解する。何はともあれ、俺は人間の女性二人組に導かれて向き合わなければならない。外界からここを管理する、edes-062の元へと。

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夢世界物語 一期一会の世界にて 後藤 悠慈 @yuji4633

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