父の愛は世界の希望

「はあ……はあ……」


 高層ビルの屋上から地下広場までの短そうで遠い道のり。その道中には、あの力を狙う悪の組織連合の下っ端たちがすでに占拠しており、ボロボロになったフロアを念入りに警戒していた。


「おらぁ!」

「いい加減くたばれ!」


 俺は、奴らが狙うその力を守るために、警戒している下っ端を蹴散らしながらひたすらに下っていた。四方八方から飛び交う銃弾。間合いに入れば瞬時に切り刻まれるナイフの一閃。それらの脅威なんて、あの力をこの胸に抱くためなら痛くも痒くも、当たるつもりもない。


「くたばんのはお前らだよ」


 俺の道を阻むものは全て弾き飛ばし、それは人間だけでなく、部屋の壁や床にも及ぶ。素直に降りていく時間までもが惜しい。それくらいに時間は残っていないのだ。


 「くそっ! おい、早く連れ出せ! もう来てるぞ……ぐっ――」


 そう連絡をしていた輩に突撃し、そのままフロアの壁を突き破る。その先には、地下に作られた巨大な基地が光景を支配し、運送車、整備車、航空機、すべてが破壊されていたが、地上へ続く巨大なゲートは未だに無傷だった。しかし、そこに傷がつくことももう時間の問題だろう。なぜなら、そのゲートに向けて、一直線に数人の集団が、ある少女を抱えて走っていたからだ。


「させるか!」


 咄嗟に掴んでいた輩を、その集団の進行方向へと投げ、自身も集団の後方へと着地をし、そのまま戦闘不能へと追い込む。今にも消えてしまいそうなほどに華奢な体、とても悲しい出来事に衝撃を受けているような顔を見せるその少女は、俺の事を見て、一言。


「来てくれた……パパ……」

「当然だ。存在を懸けて、君を守ると、あの時誓ったから」


 その少女をおんぶして、そして中にあるエレベーターを使って、再び屋上へと向かう。少女は俺の首に回した腕に弱弱しく力を込めて、精一杯に離れないように張り付く。ああ、世界で最も力を持ってしまい、そして美しく愛おしい存在は、その力に恐怖して助けを求める続ける。


「大丈夫、絶対に守って見せる。だから安心して眠るんだ」


 俺は諦めない。父である俺のこの愛は、世界の希望である自覚があるからだ。世界とこの子を守るため、屋上に置いてある、俺の愛機へと乗り込み、弾幕が舞い散る汚れた空へと、その翼を羽ばたかせた。

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