第2話 山賊との決闘

 俺がキトと近くの町まで歩いているとき、道端で倒れている女性を見つけた。

 その女性は金髪で年も近い感じがしたが、衣服の乱れなどは無くただ単に行き倒れのように感じられた。

 「大丈夫……ですか?」

 声を掛けてみるが残念ながら返事がなかった。

 どうすればいいのかキトに聞いてみると、手持ちの水を渡してくれた。俺は水を飲ます為に体をゆすったりして起こそうと試行錯誤してみるが、中々起きそうになかった。

 「どうしようか?」

 「そうだね~ここに寝かせたままでも私はいいけど、この天気の下だと死んじゃうからな~仕方ない。私がおぶって近くの町に連れて行こう」

 「わかった」

 確かにキトの言った通り今の天気は雲1つ無い快晴でとても日差しがキツイ。ジョジョの奇妙な冒険第3部に出てくるあのスタンドとまではいかないが、かなり熱い。

 「よし、行こうか」

 キトが金髪女性を背負うと歩き出した。


 キトが金髪女性を背負って歩くこと10分後、第1村人ならぬ第1世界人を発見した。その人は見た目があからさまに盗賊或いは山賊だった。

 「ねぇ、あれって山賊かな?」

 「そうだね。いい機会だ、ゲームの練習でもしよう」

 そういうとキトは堂々と山賊(仮)の横を歩くと予定通りに止められた。

 「おい!そこのガキと女、止まれ!ここから先に行きたいのなら通行料を払いな!」

 山賊(確定)が威勢良く言うと、キトがか弱く「そ、そんなお金は持ってないです~。ど、どうしてもこの先にある町に行かないと行けないんです~」と病気の母に会いに行かないといけない感じの女の子を演じると、キトの予想通り山賊はゲームを仕掛けてきた。

 「金がねぇならゲームで決める。俺の相手はお嬢ちゃんを負ぶった女でいいか?」

 「いいや、君の相手は私ではなくこの子がやる」

 「いいだろう。まずはじゃんけんだ」

 俺と山賊はゲームの決定権を獲得するじゃんけんをすると、運悪く負けてしまった。

 「へへっ。俺とお前がやるゲームは『しりとり』だ!」

 山賊は高らかにそう言うが、普通過ぎるゲーム選択に俺は唖然としキトは「やっちまったな」みたいな顔をしていた 

 「ルールはどうする?」

 「そうだなぁ……使える言葉はここにいる4人の内2人以上知っている言葉のみにする。そして、15秒以上回答がなければ負け。最後に意味が重複する言葉は1度だけの使用とする。例えば、空にある『雲』と生き物の『蜘蛛』なら、どちらか一方だけ使える。わかったか?」

 「ああ、わかった。じゃ、始めよう。先行はそっちでいいよ」

 「いいだろう。初めの言葉はしりとりの『り』から始める。ここはいつも通り『リンゴ』」

 「そりゃ、いつも通りだな。……『ゴマ』」

 「ずいぶんと早いが攻める。『マップ』」

 (ぷ攻めか。『ぷ』は他のひらがなに比べたら単語数は少ないから、よく使われるが『り』も負けられないな)

 「『プライマリー』」

 俺がそう言うと山賊は眉間にしわを寄せた。

 「なんだその言葉は?」

 「『プライマリー』とは『最初の・本来の』という意味がある言葉だ」

 「へぇー、そこの女も知っているのか?」

 キトにそう問いかけるとキトはあっけらかんとした顔で「知らない」と答えた。

 「それなら、ルール違反じゃないか!お前の負けだ!」

 山賊はそう言うが、まだゲームは終わっていなかった。

 「なぜだ!なぜ終わらねぇ!」

 「ははっ。あははは」

 「てめぇ、何がおかしい!」

 「わからないのか?お前が言っただろう。使える言葉はこの4人の内2人以上が知っていればいいと。俺がさっき言った言葉は俺以外知らなかったが意味をお前は聞いていた。……もうわかるよな。俺が意味を話した時、話を聞いていたのは4人全員だからセーフ。そして、今この瞬間お前は15秒間何も答えなかったため負けだ」

 俺がそう説明すると、山賊はやっと気づいたのか顔を青くしてその場に膝を落とした。

 「んじゃ、俺たちは勝ったから通るわ。……じゃあ、行こうか」

 「そうだね」

 俺たちは呆然としている山賊の横を通り抜け、予定通り町に向かい歩き出した。


 「いやーさっきの山賊は頭悪かったねー」

 「そうだね。自分で作ったルールを理解してないからね」

 「でも、少しは練習出来たからいいでしょ」

 「そういえば、大丈夫なのか?その女性」

 俺はキトが背負っている女性に視線を向けるとキトが笑った。

 「問題ないよ。なんて言ったって私はこの世の王様なんだから。人一人ぐらい生かせるよ」

 「それならいいんだけど……」

 俺が心配性なだけなのか、気になってしまう。

 そんな俺がチラチラ見ている女性はさっきも言ったようにきれいな金髪をしていた。その金髪は太陽の光を浴びているせいかとてもきれいな光を発していて目を奪われそうだった。

 (なんで、こんな道端で倒れていたんだろう?このご時世に行き倒れなんて普通は無いよな……う~ん)

 歩きながら悩んだが、最もらしい回答は浮かばなかった。

 「君、もう少しで町に着くよ。……大丈夫?水飲む?私の飲みかけだけど」

 「……キトはその、関節キスとか、気にしないのか?」

 「う~んどうだろう。いつもは1人だから何とも思わないかな?」

 「そういうもん?」

 「そういうもん」

 そう言われた俺はキトから水を受け取ると一気に飲み干す。

 「ぷはっ!生き返ったー!ありがとう」

 「どういたしまして」

 水が入っていた容器を返すとキトはどこかへ返した。四次元ポケットの空間ヴァージョンみたいなところに。

 その光景を見た俺は改めてここが異世界だということを思い出した。

 (今度はちゃんと生きられるかな?不安だな)

 不安に思っていると段々と町が見えてきた。

 「君、あれがこの世界の中心にある町『セントロール』だ!」

 初めて目にした異世界の町は蜥蜴人リザードマン狼人ワーウルフではなく人がいた。詳しく言えば、人類しかいなかった。

 

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