なき続ける不如帰たち

 安定に苛立つのだからどこにも行き場のない宙ぶらりんを否定


 あえて崩れよと不安定を望む。


 堕ちよ、堕ちよ、深層に。 跳ねよ、跳ねよ、しがらみ無き大空へ


 向かう先は黒く何も無く、暗闇の中。 ただ虚無と未知だけがある。


 所詮は何もせずとも食って寝るだけならば同じ道。 だからせめて意思を持って進みたいと愚考する。


 愚行の権利。 行使してでも歩き出したい。 前でも後ろでも。


 頭蓋、僅かに騒ぎ出す喧騒へと進む軽躁


 まっさかさま、心も現実すら飛びこえて縦走。

 

 全ては塑像の遥か下、戻ってこれない重躁になろうとも、それでも喘ぐ。


 その喜びと歓喜と涙。 薄っぺらい自らの器の内側で厚盛りにして唄おうか?


 人生、後何年?

 

 死は唯一定められた現実。


 その中で語り継がれるために喘ぎ、夜に泣く不如帰。


 終劇のあと、語られるには何が必要か?


 残された軌跡は新しい言葉となって観客の口々から漏れる。


 言の葉は消えては産まれ、種の輪廻によって満開に咲き誇り空へと昇っていく。


 形あるモノは全て崩れて土塊と砂粒に成り果てて風に舞う。


 形の無いモノだけが想いによってただ残るのです。


 それを夢に見て、哀れに鳴き続ける不如帰たち。


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