『詩人の書く詩と書けぬ物語、その間のジレンマよ』

それはまるで強く吹く風に当てられて飛ぶ一輪の薔薇。


離すまいと強く掴めば薔薇の棘は指に刺さる


だが抑えねば風が薔薇を持ち去ってしまう


矛盾するジレンマが詩人の創る詩と物語の間にはあるのだ。


詩人は鋭利に、ただ鋭利に言葉を、または各言葉の間、時には主語すらも慎重に削り続けることによって詩を創りあげる。


だが物語は鍛えられたそれを慎重に束ね、折り重ねていくことで、互いのそのしなやかさを重厚さに変えて心を穿つものを創るのだ。


詩人の真骨頂は研ぎ澄ますことにある。



詩人の詩は削るところのない極減の美の体現物。


詩人の詩は肌に穴を開けぬ、そのギリとギリ


詩人の詩は風に耐える弱者の喘ぎ


詩人の詩人たるところがそれなのだから、詩人が物語を創ることは難しいのだ。


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