停電の街を見る
街から光が消えた。
停電だそうだ。
華やかな衣装を照らし出す照明も、溢れかえった人々を見せてくれるカフェの店内もボンヤリとした暗闇でよく見えやしない。
風は未だ生温く、ようやく夜のスタートへとたどり着き、いまだ薄暗い。
それでも街には人が居る。
居る。 居る。 沢山居る。
誰もが歩き、話をして、時には笑いながらいつものようにゾロゾロとそれぞれの場所へと向かっているのだ。
彼らの佇まいは暗い。
だから見えない。 当然だ。 見えないのだから。
若者達が自分なりのセンスやあるいは冒険心で選んだであろう服装の細やかな造詣も飾りも無慈悲ともしかしたらの優しさの黒に塗り潰されて見えはしない。
それでも人は居る。 みんなが居る。 人々はここに居る。
若者もおじさん、おばさん、ご老人だって。
暗くて、向かう先は見えなくとも。
それでも街頭には人々は存在している。
それだけで安心するじゃないか。
街が停電しても、明かりが無くても、たとえ目前が暗闇であろうとも私達のすぐ隣に人々が確実に存在しているのだ。
見えぬからこそ、よく見えて感じることもあり、また見えるからこそ見えず見過ごしてしまうこともある。
なんという皮肉。
と答えるよりもスマホの灯りより蝋燭の揺らめく光になんだかホッとするようなそんな自然に思える素朴さ。
ああそれにしても街は暗い。
本当に暗いな〜。
暗い!暗い! 暗〜い!
まったくワクワクするほどに。
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