連れ出してくれ友よ

耐えきれず外に出る


車に乗り込み 悲鳴のような音を立てて彼に火が点る


ああ我が友よ


我が一つの同胞よ


我と共に旅立とう


あてどもなく 共にさ迷うのだ


街の光に炙られ


他の車に煽られ


弾き飛ばされた『二人』はここから出まんとする


さてどこへ行こうか?


錆びつくような潮の香りを嗅ぎに?


孤独に呑み込まれるような暗き山?


いや、どこでもいい ここから逃げだせるのなら


どこへでも


我と共に歩もう 唯一なる友よ


胸糞悪くなるような悪臭の酒を飲み


嗚咽混じる泥酔人のような息を吐き


それを歩む燃料に変え


我をどこかへ連れ去ってくれ友よ


ここは明るすぎる


自室は息がつまる


そしてその中でしか生きられない我を哀れむのならどこかへ


どこかへ


どうかどこか遠くへと


友は答えぬ


ただ我の望む先へと車輪を回して連れて行ってくれる


どこへ行けばいいのか?


それもわからぬ我と いずれ共に歩めぬその未来まで


いつまでも いつまでも


先に動けなくなるのは君か? 我か?


問いの答えは無い 必要無い


ただただ月に追いかけられながら


逃れることのできない不安


そこからの逃避行


一時 一呼吸の溜息


束の間の息継ぎ


そして今も月は背中を見ている



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