火蜻蛉の華

外では花火が満面と咲き乱れております


星の無い暗い空をパッパッと華やかに照らし出すと すっと散って夜に沈んいく


その派手でありながら儚いその音を私は箱の中で湿った布団にくるまって聞いています


咲き散る咲き散る火薬ひぐすりの華


散るな咲くな散るな咲くな蚊蜻蛉の如く


呻く口ずさもうとも 華は堕ちていく


その物悲しさを直視できず、私は狭っくるしい箱の中でそれを口ずさみます


その間にも幾百幾千ものあれは爆ぜていきます


やがて音は消えました


あのやかましくボン、ボンという声はしなくなったのです


咲き果てた華達の刹那の歌声を思い出し私はコホンと小さく礼砲を鳴らして瞳を閉じました


今日は静かなのが少しだけ寂しくなる夜でございました

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