お出かけ 2
三つ葉アウトレットパークに着き、早速レディースコーナーのある服屋さんに向かった。
最近の女子高生はどんなところで服を買っているのか知らないため、適当な所に入った。
名前は英語で書いてあったが、日本語にすると、『デリーブ・デ・デリーブ』と書いてあった。
なんか分からんが、いまどきって感じがするし、ここでいいか。
「好きな服選んでこい。俺はここで待ってるから」
そう言って2万ほどお金を渡そうとしたが、陽菜がそれを断った。
「秋本さんが私の服を選んでください!」
「いや、陽菜が好きな服買ってこいよ。正直、俺はファッションとかあんまり気にしてこなかったから、選ぶセンスなんてないぞ?」
「それでもいいんです。私は秋本さんが選んだ服を着たいんです」
じゃないといつまで経っても買いに行けそうにないし。
「秋本さんはどんな感じの服が好きなんですか?」
「清楚系な感じの服が好きだな。白とか、水色とかが似合う女性は素敵だと思うぞ。まぁあくまで俺の主観だがな」
なんとなく清楚系は白とか水色とかって言ったが、実際はどんな感じなのか全くわからない。というか、女性の服なんて気にした事なかったし、ぶっちゃけ、誰がみても変っての以外は何着てもいいと思うんだが。
俺が言うと、陽菜は中に入っていき、服を選んでいく。
別に俺の好みにあわせる必要など全くないのだが、本人がそれでいいと言っているのでどうしようもない。
「これとこれ、どっちがいいですか?」
陽菜の左手には、白のTシャツにデニムのワイドパンツを持っており、右手には白のTシャツに黒のワイドパンツを持っていた。
正直どっちも似合うと思う。その中でも右の方が見てみたいかもな。
「右の方かな」
「これですね? ならこれ買ってきますね」
「ちょっとまて。それ1着だけじゃ足りないと思うし、後2、3着選んできてもいいぞ」
「えっ?! で、でもそれなりにお金かかっちゃいますし、いいですよ」
「そんな遠慮すんなって。今まで一人暮らしだったし、お金も大分貯めれてたからな」
「で、でも」
「まぁ時間はまだあるし、他のところで買ってもいいんだぞ?」
「……なら、そうします。それじゃこれ買ってきますね!」
「おう」
そう言って俺は2万円程渡した。
それを受け取った陽菜は急ぎ足で会計の所に行った。
たく、毎回思うが、遠慮しすぎたっての。買いたいもん買えばいいだろうに。服なんて何着あったっていいんだしな。
「買ってきました!」
「なら、次の所行くか」
「はい!次も秋本さんの好みに合わせますからね!」
「いや、陽菜の好きな服選んでこいよ。俺は待ってるからよ」
「えっ? ……わかりました」
陽菜はまた選んで欲しかったのだろうが、俺が無理と言った瞬間に、悲しそうにしていた。
その姿を見ると申し訳なく思うが、流石に俺の好みの服装にするより、自分の着たい服を買ってくれた方が俺も嬉しいしな。
「買った服を最初に俺に見せてくれ。楽しみにしてるからさ」
「はい! 秋本さんが思わず抱きしめたくなるような服選んできますね!」
この子は何を言っているんだまったく。
ちょくちょく変態発言してくるが、元々こーゆー子なのだろうか。それだったらやばい。
「普通の服選んでこいよ。そもそも、そんな服ないだろ」
「冗談に決まってるじゃないですか。抱きしめて欲しいのはほんとですけど。そもそも、そんな服ないの知ってますし。まぁ下着ならあるかもしれませんが」
「そ、そうか」
「はい!」
寝てる時いつも抱き合ってますよ、と言ってやりたい。というか、目覚ました時、抱き合ってるの知ってるだろうに。無意識のうちに抱き合ってるのはノーカンってことなんですね。そうなんですね。
「次はここ、ビィーゴーで買いましょう」
「わかった。なら選んでこい」
「はーい。少し待っててくださいね!」
陽菜はそのまま服を選びに行った。
30分くらい待った頃に、陽菜が服を持って俺の所に戻ってきた。
「選んできたか?」
「はい!」
「なら会計の所に行くぞ」
陽菜と一緒に会計の所に向かった。どのくらいの値段なのかわからなかったし、お金を渡すより俺がついてった方がいいだろうしな。お金渡して足りませんでした、って事になったら恥ずかしいし。
「すみません、こんなに買ってしまって」
「気にすんなって。それより、1着だけだが、俺が選んだやつで良かったのか?」
「見せる相手、秋本さんしかいないですし、なら秋本さんが好きな服装にした方がいいかなぁって」
「いや、友達とかと遊びに行く時とかあるだろ?」
「たまにしかありませんし、これからは秋本さんと一緒に出かけることが多くなると思いますし、秋本さんの好みの服の方がいいんです」
陽菜はさも当たり前みたいな感じで言っているが、普通はそんなことしないと思うんだが。
「陽菜がそれでいいなら俺からは何も言わないけどさ」
「はい! 今日はこれで買い物終了ですか?」
「いや、まだ部屋着買ってないだろ?」
「そういえばそうでしたね」
陽菜は忘れていたのか、首をこてんとさせて、舌をペロッとだしていた。
その姿に不覚にもドキッとしてしまった。
「忘れてたのかよ」
「えへへ、ごめんなさい」
「ったく。さっさと買って帰るぞ」
「さっさと買うって、もう決めてるんですか?」
「まあな。アデダスのやつ買おうと思ってな」
「えっ?! 部屋着なのにそんないいやつ買うんですか? それ、私用のなんですよね?」
「おう。と言っても、俺も買おうと思っているがな」
「そうなんですね。でも、部屋着なのにそんなにいい物買っていいんですか?」
「別にいいんだよ。部屋着にするのが勿体無いと思ったら外出用にすればいいんだし」
「それもそうですね。ならペアルックにしませんか?」
「え? なんで?」
「私がしたいんです!」
どうしてもそこだけは譲れないのだろう。顔にでている。
まぁ、部屋着をペアルックにしたところで誰にも見られるわけでもないし、別に構わないか。
「……はぁ、しょうがねぇーな」
「いいんですか? 私がいうのもあれですけど、迷惑じゃないんですか?」
「別に、ただお揃いの服買うだけだろ?」
「それはそうですけど」
「それに、俺たち家族なんだし、お揃いの服買ってもなんの問題もないだろ?」
「か、家族って、私たちまだ結婚してませんし、家族はまだ早いっていうかなんていうか、それとも私のお父さんという意味なのかな?」
小さい声で呟いていたので俺には内容は聞こえなかったが、なんで顔を赤くしているのかがわからない。なんか俺、変なこと言っただろうか。
「ほら、さっさと買いに行くぞ」
「はい! パパ!」
何を勘違いしたのかわからないが、俺のことをパパと呼ぶのはやめてほしい。それも店の前で。
「パパって呼ぶなよ」
「パパはパパですよ? 私の今のパパは秋本さんなんですから」
「せめてお兄ちゃんにしてくれ」
少し歳の離れた兄妹に見えなくもないため、せめてお兄ちゃん呼びにしてほしい。
ていうか、前までパパって呼んでたのか。高校生なのだから、お父さん呼びだと思ってた。
「パパはパパなのです! 私たち家族なんですよね?」
「そ、そうだな」
「なら、秋本さんは私のパパなのです」
そう言って俺の右腕に抱きついてくる。突然の事だったため避けることもできず、かっちりと右腕をホールドされた。何度も言うように店の前で。
「ちょっ、離れろ。皆見てるぞ」
「別に見られてもいいです! 私たち家族なんですから!」
なんて言っているが、陽菜の顔は終始赤くなっている。
今にも湯気が出そうな勢いだ。
「……もうこのままでいい。さっさと買うぞ」
「はい! そうですね!」
「おう」
正直、さっきまでと態度が違う陽菜を見て驚いた。
確かに養子縁組したわけでもないし、親戚でもない赤の他人だから、迷惑をかけたら追い出されると思っていたのだろう。
俺に家族と言われて、俺との関係が変わったことで、心配がなくなったのは嬉しいが、ここまで甘えられるとこっちの心臓がもたない。
「パパ! この色のパーカー良くないですか?」
「おー、確かにこれいいな。なら、これにするか」
水色のアデダスのパーカーを買うことにし、サイズを確認してから会計に向かう。勿論、陽菜も同じ色のやつだ。
「……ありがとうございます」
「お、おう。それじゃ、買うもんも買ったし、帰るか」
「はい!」
陽菜が今度は左腕に抱きついてきた。
歩きづらいが、離れてくれる気配がないため、このまま帰るしかないのか。
結局そのままの状態で帰ることになり、周りから変な目で見られる羽目になったが、通報されることなく家につくことができた事にホッとした俺がいた。
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