お出かけ 1
土曜日。
あの一回以降、陽菜は俺の事をパパと言うことはなかった。
なんであの時、俺の事をパパと言ったのかは謎のままだったが、そんな事はどうでもいい。
今日は休みなんだ。この時間を満喫する事が今俺がやる事だ。
居間でテレビを見る。平日は仕事があり、なんだかんだと朝は忙しく、ゆっくりとテレビを見る時間などあまりなかった。せいぜい歯磨きする時くらいだ。
「女子高生のスカートの中を盗撮した疑いで、20代男性を逮捕、ねぇ」
居間でごろんとしていると、テレビでそんな事をやっていた。
若い女性が良いのはわからんでもないが、やはり性的な目で見る事は出来ない。決して魅力がないのかと言われれば首を横に振るが、未成年者だと思うと、なんだかなぁ〜と思ってしまう。
だが、最近はよく未成年者の性的な事件が増えているところを見ると、案外世の中の男共は欲情するということがわかった。
「せめて20歳は超えてないとなぁ」
俺がごろごろしている間に、陽菜は洗濯をしてくれている。
そういや、前に俺から話したい事あるとかって言ったが、すっかり忘れてた。
まぁ家事の事だったが、陽菜が家事全般やってくれてるから言うことなくなったし、よしとしよう。
「秋本さ〜ん」
「どした? ってちょっ」
陽菜に呼ばれて顔を上げるとスカートの中がばっちしと見えてしまった。
黒色の少し薄そうな
見た目にも反して大人っぽい下着を着けている事に少しドキッとしてしまう。そこを誤魔化すように口を動かした。
「パンツ見えてるぞ?」
「……パンツ見るなんて変態ですね」
「いや、パンツが見える位置にいたのは陽菜の方だよな?! それに、スカート履いてる方が悪い」
「私、そもそも制服しか持ってきてないので、必然的に制服着てないといけないので、スカートはしょうがないのです」
確かに、あった時はリュックを一つしか持っていなかったし、それには下着類を入れていたらしいが、下着類だけでリュックが埋まるはずがない。他に何か持ってきているはずだよな。
「初めてあった時、リュック持ってたけどその中に下着類以外に何入れてきてたんだ?」
「下着以外だと教科書ですかね」
教科書を入れていたとなると、流石に服などは入らないか。
まてよ? この前親戚のところに行った時にリュック持っていってなかったか?
「この前陽菜の親戚のところに行った時に、持ってきてなかったか?」
「その時は、一回で持ちきれなかった教科書を持ってきました。服はなければないなりになんとかなりますし」
「なるほどな。服なら実際、制服あればなんとかなるもんな」
「はい! と言っても制服でいるのも割と
家の中でもずっと制服姿だとこっちも落ち着かないし、ついでに陽菜の服でも買いに行くか。まぁ布団が届いた後にでも行ってみるか。
「そういや今日荷物届くから、それ届いたら買い物行かないか?」
「えっ? 買い物ですか?!」
「おう。買いたいもんあるしな」
「行きたいです! 準備してきますね!」
買い物がよほど嬉しかったのだろう、陽菜は今にも踊り出しそうな勢いだった。
俺からしたら、買い物ごときでよくそんなはしゃげるなと思うが。
「そんなはしゃぐなって。たかが買い物だろ?」
「それはそうなんですけど。私、両親と買い物とかってあんまり行ったことなかったんです。なので楽しみです」
「……そうだったのか」
「はい!」
ていうか準備するったって、歯磨きして、顔洗って髪をセットする以外に何もできないだろ。化粧品を持って入れば別だが、陽菜がここにきてから、化粧している姿を見ていないため、化粧品などは持って来ていないのだろう。
メイクなども高校生はするだろうし、その辺のも買うか。
配達業者さんが来て荷物を受け取り、中に運ぶ。
「秋本さん、何を買ったんですか?」
「それは秘密だ」
寝る前まではバレないようにしないとな。バレたら何言われるか分からんし。
隣で『教えてくださいよ〜』と
「荷物もきたことだし、買い物行くか?」
「……わかりました。でも、今日中には何買ったか教えてくださいね?」
「まぁ寝る前までには教えるよ。どーせ、その時までにはわかることなんだしな」
「そ、そうなんですか?」
「まぁな。中身、楽しみにしとけ」
「はい!そうしますね」
「それで今日は何買いに行くんですか? 食材ですか?」
「いや、今日は陽菜の服でも買いに行こうかなって思ってな」
「私の服ですか? 別に私いりませんよ」
「制服しか持ってないやつに言われてもな」
「むう〜」
そんな可愛い声をあげても買いに行くと決めたら買いに行くんだ。
今だって周りからどんな風に見られてるかわかったもんじゃない。
「そ、それはそうですけど」
「だから買いに行くんだよ。ついでに部屋着も買うからな」
「で、でも」
俺が何を言っても遠慮気味なため、どうしたもんか。
子供は子供らしく、もっとわがままとか言えってのに。
「俺が困るからよ。毎回パンツ見せられりゃ、興奮しちまうからよ」
「ほ、ほんとですか? ……あれ? 確か私のパンツ見ても興奮しないって言ってませんでしたっけ?」
「そ、そこは気にするな」
陽菜は俺のことをみてニヤニヤしていた。
本当は興奮してたんでしょ、嘘はいけないなぁと言わんばかりの顔をしている。
確かに朝は興奮しないって言ったが、今はそう言うしかなかったんだ。そうだ、そうだよな。うん。
「で、でもほんとに買ってもらっていいんですか?」
「むしろお願いしてんのはこっちなんだし、遠慮すんなって。それに、陽菜が服買わないって言うなら、一緒に出かけられないな」
ほんとは嘘だが、こうでも言わないと買うって言わないと思うし。
「……わかりました。なら、私帰りますね」
あ、あれー。どうしてそうなるの? 普通そこは買うって流れになるはずだろ。
「お、おい。なんで帰ろうとしてる」
「だ、だって、服買わないと一緒に出掛けてくれないんですよね? なら、帰った方がいいんです」
「なんでそうなるんだよ」
「これ以上よくしてもらっても、私は何も返えるすことができません。もうこれ以上秋本さんの迷惑になる事はしたくないんです」
たく、そんな事心配してたのかよ。
……ほんと可愛い奴だな。
「なあ、陽菜。俺はいつ迷惑だって言った? 言ってないよな? ならよ、心配すんなって。もっと甘えてくれてもいいんだからな? 俺は陽菜に甘えられるの大歓迎だぞ」
「あ、ありがどうございまず」
鼻をすすりながら、泣いてしまった陽菜を優しく抱きしめて頭を撫でてやる。
無意識のうちに抱きしめて頭を撫でてしまった事に気付き、俺は慌てて離れた。
さいわい、まだ家を出てすぐの所だったためあまり人がいなかった事が不幸中の
「落ち着いたか? 落ちついたのならそろそろ行くぞ?」
「は、はい。落ち着きました。もう大丈夫です。そろそろ行きましょう」
正直、早くこの場所から離れたかったというのはある。周りから変な目で見られていると思うと、たまったもんじゃないし。
「そんじゃ、気を取り直して服買いに行くぞ」
「はい! ありがとうございます!」
こうして俺たちは、やっと目的地の場所に向かう事ができた。
まだ1日が始まったばかりだというのに、早くも家でごろごろしたいと思う俺であった。
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