第6話 浅海 結 Ⅲ
お医者さんに手術でよくなるかもしれないと言われたことと、砂浜に彼がいたことの相乗効果によって今日ははしゃぎ過ぎた……
でも、そんな後悔よりも私は今日、彼は下の名前で呼んでもらえた。それだけで満足だった。
病院に帰り、部屋にお母さんがいた。
しかし、私が出かけて帰ってくるととても元気でいて、とても楽しそうだと看護師に聞いて、実際に見たお母さんは私に怒らなくなった。最近はお母さんとテレビの話などをする事が多い。
ちょうどお母さんと昨日のバラエティー番組の話をしていた時に看護師がやって来て、お医者さんから話があると言って私たちは連れて行かれた。
部屋に通されると既に私の担当のお医者さんが座って待っていた。挨拶を交わすと早速本題に入った。
「以前に話していた手術の件ですが、思いの他に病気の進行が速くて難しい手術になってしまい手術不可能です。ですから――」
「じゃぁ! この子は、結はどうなるんですか?」
お医者さんが言い終わる前にお母さんが声を荒らげた。
「待ってください。違います。ですからこの病院での技術的な面においての話です」
お医者さんがそう説明するとお母さんは少しずつだが静まった。
「しかし、現在国内において結さんの病気の症例は少なく、成功率も低くなってしまいます。ですので海外でこの症例を数多く扱っているドクターを紹介します。いかがですか?」
そんな突然言われても……私とお母さんは顔と顔とを見合わせた。
「先生、それならこの子は治るんですか?!」
お母さんが尋ねた。
「もちろんこの国で手術するよりは」
言われてお母さんは私を見た。言いたいことは分かる。助かる確率がものすごく高いため断る理由もない。
ここにはもういられないと分かったとき、一番最初に浮かんだのは雫君の顔だった。
――どうしようか、私の気持ち
彼はまた私に元気をくれるだろうか。
これ以上考えても仕方がなく、次の日に雫君には内緒で彼の学校に行ってみようかなとふと思った。
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